2014被災地の移動送迎支援活動セミナーご報告

「災害時における障がい者・移動制約者の実態と取組の課題」
必要な移動送迎支援活動(201被災地の移動送迎支援活動セミナー)報告~八幡 隆司

3月30日(日)に、たかつガーデンで、「災害時における障がい者・移動制約者の実態と取組の課題」というシンポジウムが行われました。
以下、どんな会だったのか、ご報告します。
【はじめに】
ゆめ風基金・代表の牧口さんからは、
『30年前に始まった京都の地下鉄に障害者が乗れるようにする運動に影響を受けて大阪でも地下鉄に乗る運動が始まった。駅にエレベーターを設置する運動は最初は一つから始まるが、一つ乗れる、または降りられる駅ができてもそこから降りる、またはそこへ行くために乗る駅がないとどうしようもないということが起きる。その矛盾をを何とかするために他の駅にもエレベーターが設置されるという矛盾から始める運動だった』という話がありました。
【吉田樹さん講演】
福島大学で福祉送迎の調査研究を行っている吉田 樹(よしだ いつき)さんが、まず講演。
吉田さんからは、
『特に福島の現状について、放射能汚染により人口流出が続き、地元で雇用すべき人が集まらない、人口減少が続いている、家族が地元と避難先に分かれているという2重生活の人も多い。』という話がありました。
さらに、
『若者の流出で高齢化率がどんどん上がっている、高齢者は引きこもり生活で健康状態が悪くなっているためお出かけを支援することが大事だ。』とも。
『福島では、中央通りと浜通りを結ぶ交通が不足していて、今は、いろいろな省庁の補助金を得て、受け入れる自治体の担当部局もばらばらなままにいくつかの路線バスを走らせているが、計画的なネットワークを誰も主導しないために、補助金が切れれば、すべてのバス路線が打ち切られる。
福島大学でも、一時帰宅を支援するバスを出しているが、墓参り、仏壇の手入れ、掃除、草引きが主目的で、交通を支えるというよりはお出かけを支援し、お出かけする人のコミュニティを作ることが主な目的。
単位採算性だけを考えて「移動・交通」を整備することは難しい。
地域の生活力を高めるという視点で、あらたな移動サービスを作り上げていくことが大事だ。』と話をされました。
その意味で、市町村、移送事業者、市民をつなぎ、三者が三方良しになるために、三位一体の文化を作り上げる第三者による仕事人の必要性も強調されました。
【パネルディスカッション】
石巻市 NPO法人移動支援レラ 村島 弘子さんの発表
『石巻は約6000人の死者・行方不明者を出した最も被害の多い地域。
そこで移動支援のニーズが高いことがわかり活動を始めた。
当初は避難所に障害者がいないといわれたが、障害者に限らず、みんな車をなくして移動に困っていたためすべての移動ニーズにこたえていった。
やがて、自力や家族での移動ができるようになると、今度は障害者・高齢者のニーズが増えていった。
利用者層は自然に変わっていった。
その中でも高齢者の割合は高く、9割が通院目的での利用。
これは震災に関わらず病院が遠く、バスなどの公共交通機関が利用できないという問題。
被災地支援から日常支援になっているともいえる。
利用者の経済状況から言ってもタクシー代はとても払えない。
災害の影響が強い一方で、災害と関係なく移動困難な人々がいるという状況。
今後もいろいろな角度から地元のNPOとして移動サービスが提供できるように頑張りたい。』ということでした。
岩手県田野畑村 NPO法人ハックの家 竹下 敦子さん
『田野畑は人口3500人ほどの小さな村。
ふだんはそこで就労継続B型の事業所として活動している。
ただ、今回の震災で水産加工の部門がやられた。
その日は、たまたま仕事が午後1時くらいと早くに終了したので、みんな無事だった。
いつも通りだと3時くらいになるので、そのことを思うとぞっとする。
津波は27.6メートルというすごい規模。
被害額はこの小さな村で280億円超。
震災直後特に通院や薬の確保、交通手段がないことで困っている人がいっぱいいた。
ハックとしても何とか力になりたいと頑張っていたが、通常業務もあり、頭を抱えていた。
そこで「ゆめ風基金」と出会って、移動送迎サービスの補助が出るようになった。
3500人の村とはいえ、見知らぬ障害者と一杯知り合った。
救援活動には終わりがある。
今後1年は支援を受けることができるが、その後の問題がある。
三陸鉄道全線開通で少しは変化があるか?
しかし車いすに対応していない鉄道なのであまり期待もできない。
自分たちの事業を膨らませてその余力でやっていくしかないと感じていた。
ただ昨日、今日といろいろな話を聞いて、別な可能性があることを感じた。
しっかり村とも協議していきたい。』とのことでした。
日本障害者フォーラムJDFいわて支援センター 小山貴さん
『JDFいわては、2011年9月に発足。
陸前高田市より障害者世帯の全数調査を受けた。
調査の中でもやはり移動に関するニーズは高かった。
陸前高田市では、基本的に仮設住宅の近くにバス停を作るといっていたが、実際には1キロ近く、しかもかなりの斜面が急で、かなりの道のりを行かないとバス停にたどり着かないところもある。
また、病院がもとから少なく、近隣の市まで行かないと病院がないという家も多い。
片道タクシーでは1万円近くかかるので、経済的負担も大きい。
その他が学校への送迎もニーズが高い。
移動送迎について当事者も交えて、これまで市と協議を続けてきた。
その結果、今年度より市から補助金が出るようになった。
これをきっかけに、東北の沿岸市町村で移送送迎の補助金出るようになってくれればと思う。』
【討論】
八幡:石巻ではこれまでいろいろな補助金を活用してきたと思うが、今後の運営について財政面ではどう考えているか?
村島:これまで第3の公共という費目で補助金があり、それがまた名称が変わって続いてきた。今後の補助金については全く見通しが立っていないが、4月以降の応募状況を見ながら申請していきたい。福祉有償運送についても今年度中には道を作っていきたい。
八幡:田野畑ではどうか_
竹下:これまであと1年で補助金が切れたら、自前でやっていくしかないと思っていたが、陸前高田市の話を聞いて、自分も村と交渉していけば良いんだと可能性が出てきた。頑張ってみようと思う。
八幡:これまで国も補助金がタクシーやバス会社などに重点を置き、NPOまでお金が回ってこなかった。このような対応について吉田さんはどう考えるか?
吉田:確かにこれまで国はバス会社やタクシー会社に補助金を出していたが、移動送迎は採算性だけでは語れない部分がある。今後はNPOなどにも補助を出すという感が肩ができると思う。
八幡:被災したということだけでなく、元から移動送迎に困難があった地域、仮設住宅以外の送迎はどうなっているか?
村島:石巻は合併をしたので、とても市域が広い。仮設住宅でなくても送迎に困っている人が多く、送迎をしている。
小山:やはり病院が遠いので、普通の人も病院までの送迎がほしいという状態。
八幡:田野畑村は隣りといっても1軒1軒相当離れている。孤立している人も多いのでは?
竹下:元からの孤立も相当多い。車のない人はみんな外出を我慢している。
八幡:東北の人は我慢強いというか、みんな送迎に困っているからと言って声を上げない。そういう面で当事者の声が上がるということは少ないのでは?
村島:確かに自分から声を上げていくという面は少ないが、今後つながりを持てたことで声が上がっていくのではと期待している。
八幡:陸前高田では当事者参加のもと行政との話し合いがあったというが、それは小山さんがいたからできたのか?
小山:そういう面はあると思う。やはり陸前高田の人もあまりふだんは声を上げていかないので。
八幡:田野畑では見知らぬ障害者との出会いがあったというが、人口3500人ほどの地域で見知らぬ存在というのは障害を隠している人が多いのか?
竹下:そういうわけではないと思う。ただ外出をあきらめてしまっている人が多くて、これまで出会わなかったという感じ。
八幡;今後東北だけががんばれば良いという問題ではないと思う。私たちも含めて今後取り組むべき問題とは何か、吉田さんから一言。
吉田:移動送迎に困っているのは何も東北に限ったものではない。都会にも存在する問題。お出かけをどう支援するのか、これはみんなに共通している。この5年間で国土交通省も変化を見せている。今後5年間自分たちが声を上げていくことでどう変わるかという問題。


【被災地における障がい者、移動制約者への移動送迎支援活動基金設立について】
移動支援活動を長年行っている、関西STS連絡会の、柿久保さんから、
『今後、どこかで災害があっても、移動支援は必要になるし、そのことに特化した組織やお金が必要になる。
そのために使える基金の設立を今考えている。』
と、基金設立議案書と実施要綱についての説明がありました。
●長時間のセミナーで、午前中は大雨が降り、参加者が集まるのか不安でしたが、
午後からたくさんの方が来てくださり、会場は熱気に包まれました。
交通機関が整っていない地域での移動は、本当に切実な問題です。
大阪のように、公共交通機関が整っていない所のほうがが大部分で、そんなところで大災害が起こったら・・・。
次の一歩を踏み出すことを決意させられるセミナーでした。

(午前中、大雨でしたが、会場は満員に!皆さんの熱気が感じられるシンポジウムでした。)

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