「宮古はいま・・・」
と、いう原稿依頼を受けて何を求められているのか、何を発したらよいのか考えました。
また、ブログへ掲載ということは公表ですので、毎度のことながらどこまで書いたらいいか悩みます。
昨月(平成27年2月)に、被災地の現状が知りたいという方へ原因を含めて現状を話したところ、かなり落胆されており、その方の表情を思い出すと、真実を伝えない方が良かったのではないかとさえ思ってしまいます。
あくまで、私的な考えとお断りさせていただいて、宮古市の「ひと・まち・くらし」の今のほんの一部を。
災害公営住宅や高台・嵩上地で、今年の春以降に多くの人が新しい場所での生活を向かえます。
港湾・道路・橋・堤防等が直ったり、新しい所が次々と出来て目に見える“復興”は進んでいます。
災害公営住宅への入居はすでに始まっているところもあるようですが、各地の受入れ状況は様々で、既存自治会の反発がある所や既存住民との境をなくしていこうとしている所、公営住宅と自立再建の差に不満が出ている所、地区を細かく分けて地域住民主体で地区毎に再建が進んでいる所、災害公営住宅のみで自治会を作る方向の所等、場所ごとに対応や進め方は様々です。
宮古市のボランティアや支援団体に関しては、昨年からは宗教関連の団体が大多数で、その他は公益系のものばかりで、市民活動といわれるものはゼロに等しいです。
ボランティアや支援活動といわれるものの多くへ疑問を感じます。
予算ありきの活動や、必要性のない活動、地域住民ではなく支援者主体の活動が殆どで、地域住民の自立や将来性を考えた活動は無いのが現状です。
この事に関しては、宮古市に限らず多くの被災地でも同様のようです。
産業に関しては、宮古市の主力産業である漁業ですが、港湾や漁業設備などは多くの資金が投入されて新しい設備が次々と整備されて、回復している面もありますが設備や施設・道具がそろっても、そこで働く人が減っていて人材確保がままならないところも多々あります。また、震災後の支援という名で契約した大手に当時の値段のままで買いたたかれて売れば売るほど赤字になるものもあります。
宮古市に限らず岩手県では求人倍率が一時(震災前)より上がり景気が上向きになったと捉えられているようですが、実際には復興関連の公共事業が多く、地域の継続的な雇用とはならず、一過性のものばかりですし、公共事業の多くは地域への還元が多くないものが殆どです。
被災地の人が現在どう思っているかは、多様な考えがあるので一概には言えませんが、いわゆる一般住民と話す時に出てくる話の多くが暗い話です。
住宅再建後の収入が確保できるか?住宅再建の場所の安全性は?地域で今後も生活できるか?仕事はあるのか?地域のコミュニティーは?買い物に行けるか?病院は?等々。
実際、人口減や超高齢化、福祉従事者の不足、交通が不便、買い物が不便、孤立等様々な現実が今現在あるものよりさらに悪化していきます。
また、震災後の様々な事案に対する不公平についてのわだかまりがあり、そのことが地域住民の間に根深いものを残したことにより、復興や地域課題への対応が進まない一因となっているのも事実でしょう。
仮設住宅の状況ですが、入居者が3割程度退去しています。
しかし、実際の入居者や世帯数を把握しているところはどこも無いのが事実です。
それは、世帯分離や書類上は入居していても物置や別荘のように使用している場合も
あるからです。
仮設住宅へ入居してから3年以上が経過し、住宅のあちこちにガタがきています。
元々、応急仮設住宅ですし、仮設住宅毎に同じ予算で建てられたものですが、
建築関係者が指摘しているように、とても同じ予算とは思えない造りに差があります。
また、混乱しながら突貫工事で建てられたもので、入居当初から不具合が多々ありました。
現在は、プレハブタイプの仮設で、木の部分が腐ってきて抜けていたり、壁の隙間が
外の光や隣の光がしっかりとわかる程まで広がっていたりします。
これらについては「無料で住まわせてもらっているから文句は言わない」という方もいれば、
「あまりにも酷過ぎる」と、意見は多様です。
さて、雑多にまとまりも無くほんの一部を書かせて頂きましたが、東日本大震災からの現在までや、現状に関して話したり書き始めるときりがないのが事実ですし、課題の多くは、被災の有無に関わらず多くの市区町村で抱えているものであったり、潜在しているものだと感じています。
本当の真実を知りたければ、実名を出して話さなければならない事が多いですし、その方がわかりやすいでしょう。被災地だけの事ではないのがわかります。
それと、ある一部の話(又は、一人の話)を聞いて、それが事実だと思わないでください。私個人の経験や資料が無断で勝手な解釈で使われていたこともありますので。
この災害で学ぶべき事や改善できる事があったはずなのですが、実際には多くの善意が無にされたり、お金の多くが無駄に使われたり、人が数字の1として使われたりしています。
夢や希望が先にあるのはとても良い事ですが、現実をしっかりと見つめた中での夢や希望に向けて進みたいです。
一つ、最近の話ですが地域住民との話のなかで、災害公営住宅や自主再建で高台や嵩上地に引っ越す事で新しい生活の希望がある反面、安全性が確保されていないところへ行くのが不安だとの話がありました。
「今の所は、津波から逃げなくてもいいけど、今度の所はどこに逃げたらいいべ?」
と。
これが、一部ですが現在の復興案の真実を物語っているように思います。
最後に、真実をうまく伝えることが出来ずに申し訳ありません。
うましか 延足 圭祐(宮古市田老在住)