眼の会の榊原さんから、防災関連情報を頂きました。
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<仮設住宅>高齢化率43%超える・宮城県調査
河北新報2015年3月2日(月)12:17
東日本大震災の仮設住宅で、65歳以上の入居者の割合が43.8%に上っていることが、県の調査で分かった。
高齢化率は上昇基調にあり、県平均(24.0%)を大きく上回る。
独居高齢者世帯の割合も2割を超えており、孤立への懸念が強まっている。
調査は2012年から年1回行われており、直近では14年秋に実施された。
各年の高齢化率と独居高齢者世帯率はグラフの通り(略)。
いずれも3年連続で伸びた。
14年の独居世帯率は県平均(10.0%)のほぼ倍となっている。
住民の職業は無職が36.9%と最も多く、13年比で2.3ポイント増えた。
自宅再建するなどした現役世代の退去が進み、経済基盤の弱い高齢者が取り残されている様子がうかがえる。
住民の高齢化に伴い、孤立防止に向けてコミュニティー維持がより重要になる。
県社会福祉課は「社会と接点が薄い人の仮設暮らしが長期化している可能性がある。
戸別訪問などの際、より丁寧な対応が必要になる」と話す。
14年の調査は石巻、気仙沼、名取、岩沼、東松島5市と亘理、山元、南三陸3町のプレハブ仮設住宅で生活する約1万3000世帯が対象。
回収率は50.2%。
重度心身障害児の避難支援 医療従事者の8割対応考えず
神戸新聞2015年3月7日(土)11:00
在宅で人工呼吸管理、管理栄養などの医療を受ける重度心身障害児が増加している中、神戸大大学院保健学研究科の高田哲教授(小児保健)が、治療に日常的に関わっている全国60施設の医師・看護師らを対象にアンケートを実施したところ、8割が「災害時の対応について考えていない」と答えた。
重度心身障害児の避難をめぐっては、東日本大震災でも課題が浮き彫りになったが、支援態勢はほぼ未整備のままだ。
兵庫県小児科医会の調査では、重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複し、在宅で医療を受けている20歳未満の障害者・児は2007年には県内に118人いたが、14年には734人と6倍に増えた。
医療が発展したほか、入院施設の不足などが背景にあるとみられ、全国的な傾向という。
一方で、災害時の避難受け入れ態勢は進んでいない。
阪神・淡路大震災では、重度障害児がいる家庭の半数以上は自宅にとどまり、14%は自家用車の中や病院に避難
していたが、東日本大震災でも、その比率はほぼ同じだったという。
アンケートでは、災害時の対応について、「よく考えている」は3%、「かなり考えている」は15%にとどまり、「あまり考えていない」が72%、「全く考えていない」も8%に上った。
地域で避難支援を受けるための要援護者情報登録制度についても、治療対象者の家族らと「話す」と答えたのは5%にとどまり、18%は「あまり話さない」、75%は「全く話さない」と答えた。
高田教授は「重度心身障害児の在宅医療は、一般に思われている以上に高度で、当事者や医療関係者の関与なくして福祉避難所の態勢整備は難しい。
重度障害者に対処できる医療機関のすそ野を広げることも災害時の対応強化につながる」と話す。
(森本尚樹)
【正論】防災に障害者の視点は不可欠だ 日本財団会長・笹川陽平
産経新聞 2015.03.06
3回目となる「国連防災世界会議」が3月14日から5日間、宮城県仙台市で開催される。
東日本大震災をはじめ各地の大災害では障害者や高齢者など「要援護者」が災害の矢面に立たされ、より多くの被害を受けた。
これを受け、向こう10年間の世界の防災戦略を策定するこの会議では、今回初めて「障害者と防災」が公式会議の正式なセッションに盛り込まれた。
≪横浜、神戸に次ぐ世界会議≫
会議には全国連加盟国193カ国の代表や国際NGOなど1万人を超す人が参加する。
災害多発国としてハード、ソフト両面の豊富な知識を持つ日本は、今後の国際的な防災戦略を主導する立場にある。
災害被害を少しでも減らすためにも会議では、要援護者を視野に置いた防災・減災害対策が打ち出される必要がある。
外務省の資料によると、2000年から12年までに世界で発生した自然災害で29億人が被災し、120万人が死亡。
損害額は1・7兆米ドル(約202兆円)に上り、被害の90%が途上国に集中した。
こうした中、国連防災世界会議は1994年に横浜市、2005年には神戸市で開催され、横浜会議では「より安全な世界に向けての横浜戦略」が採択された。
神戸会議では直前(04年12月)に22万人の犠牲者が出たスマトラ沖大地震・インド洋大津波が起きたこともあり、世界各国の閣僚級が参加して、15年まで10年間の「兵庫行動枠組」をまとめた。
兵庫行動枠組では防災を国や地方の優先課題に位置付け、早期警報の向上、防災文化の構築、公共施設やインフラの耐震性の強化などを打ち出したものの、障害者に関しては「最も脆弱(ぜいじゃく)な地域やグループに焦点を当て、災害準備や緊急事態対応計画を準備する」といった簡単な記述を盛り込むにとどまった。
しかし神戸会議の後、ミャンマーで13万人を超す死者・行方不明者が出た大型サイクロン・ナルギス(08年5月)、31万人の死者が出たハイチ地震(10年1月)、さらに11年3月の東日本大震災と大災害が続き、多くの障害者や高齢者、子供が犠牲となった。
≪向こう10年間の国際防災戦略≫
日本財団は1986年、世界の防災に顕著な功績を挙げた個人や組織を表彰する国連笹川防災賞を設け、国際防災の強化を目指してきた。
今回はこれら関係機関とも協力して東京やニューヨーク、バンコクなど世界7都市で障害者と防災をテーマにした国際会議を重ね、最終的に世界会議に「障害者と防災」のセッションを盛り込むことができた。
東日本大震災で障害者手帳所有者1655人が犠牲となり、死亡率が当該地域住民の約2倍1・5%に達したことが初めて数字で裏付けられた点も契機となった。
災害が発生した場合、障害者にはあまりにも多くの困難が待ち受ける。
聴覚障害者は避難の呼び掛けがあっても情報を受け取れず、視覚障害者は避難しようにも電柱や建物の倒壊など周囲の状況を把握できない。
倒壊した家屋の中に取り残された聴覚障害者や言語障害者は「誰かいますか」と声を掛けられても、返答ができない。
車いすなど肢体不自由者が混乱の中で避難するのは難しく、避難場所に着いても車いすのため、人に遠慮せざるを得ない。
避難生活で体調を悪化させ死亡する「震災関連死」も東日本大震災では既に約3200人に達し、阪神・淡路大震災の3倍を超えた。
世界会議では兵庫行動枠組の後継となる新たな国際防災の枠組みを策定するほか、日本が多くの災害から得た教訓や防災技術、ノウハウ、さらに東日本大震災の経験や被災地振興の現状を報告。
障害者と防災のセッションでは地域防災と障害者の関わりなどについて議論が行われる予定だ。
≪復興、地域創生にも道拓く≫
今年は国際社会の共通の開発目標である「ミレニアム開発目標」(MDGs)の達成期限を迎え、9月の国連総会では「ポスト2015年開発アジェンダ」が採択される予定。
年末には国連気候変動枠組み条約の「第21回締約国会議(COP21)」もフランス・パリで開催され、20年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が合意される見通しだ。
近年の異常気象が地球温暖化の影響か単なる自然現象か、専門家の研究を待つしかないが、地震に伴う大津波と同様、巨大台風が引き起こす高潮も大きな脅威となりつつある。
世界規模の災害が今後、間違いなく増える気がする。
経済成長が著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)などで引き続き新たな開発が進む。
その場合、障害者や高齢者を守る視点をどこまで持つかによって発生する被害の程度も変わる。
「弱い人々」に目線を合わせ防災・減災対策を取れば、その分、人的被害は確実に減るということだ。
障害者に視点を当てた地域づくりこそ、安心して暮らせる地域社会の建設や東日本大震災の被災地復興、ひいては喫緊の課題である地域創生にも道を拓(ひら)く。(ささかわ ようへい)
災害公営住宅の住民、薄い復興実感
河北新報2015年3月10日(火)06:05
河北新報社と東北大、被災者アンケート
東日本大震災の被災者が暮らしの中で感じる復興の手応えを居住形態別に見ると、災害公営住宅の入居者ほど復興を実感できずにいることが、宮城県沿岸12市町の被災者を対象としたアンケートで分かった。
自力再建が難しい事情を抱えながら、自立を求められる災害公営住宅入居者の実態が浮き彫りになった。
震災発生から11日で4年となるのを前に、河北新報社と東北大災害科学国際研究所が共同で調査した。
アンケートは「生活の充実度」「生活の満足度」などに関する計15項目を5段階で評定してもらった。
評定結果を点数に置き換え、75点満点で「生活復興感得点」を算出した。
居住形態別の得点はグラフ(略)の通り。
最低点は災害公営住宅の入居者の34.3点。
生活復興の象徴とされる災害公営住宅だが、入居を果たした被災者の主観評価は低かった。
既に耐用年数を過ぎたプレハブ仮設住宅も36.6点にとどまる。
いまだに転居できない入居者の不安や不満が得点に表れた。
最も得点が高かったのは、被害のなかった持ち家。
以下、民間賃貸住宅、修繕した持ち家、再建した持ち家、借り上げ仮設住宅と続いた。
災害研の佐藤翔輔助教は
「阪神大震災でも同様の結果が出ている。災害公営住宅の入居者は、もともと経済面、健康面の問題から自力再建が困難な層。さまざまな場面で復興の手応えを感じられずにいるのではないか」と分析した。
その上で「比較的得点の高かった借り上げ仮設住宅が、今後の復興のヒントになり得る」と助言した。
平均は40.0点で前年調査から2.0ポイント上向いた。
市町村別の得点推移(グラフ略)では、仙台(41.5点)名取(40.8点)亘理(40.7点)岩沼(40.5点)が平均を上回った。
[調査の方法]2013年2月に宮城県内の被災12市町でアンケートを行った仮設住宅の入居者1150人のうち、継続調査に同意した374人にことし1月下旬、調査票を郵送。
255人(14年2月調査は354人)から回答を得た。
性別は男性38.4%、女性58.4%。
平均年齢は65.3歳。
調査会社のサーベイリサーチセンター東北事務所の協力を得た。
防災の視点、全政策に=「仙台宣言」原案―国連会議
時事通信 3月11日(水曜日)2時31分配信
仙台市で14日から開かれる国連防災世界会議で採択を目指す政治メッセージ「仙台宣言」(仮称)の原案が10日、判明した。
各国や国際機関の全ての政策に防災の視点を盛り込む「防災の主流化」の必要性を提唱。
気候変動による災害増加も取り上げ、防災は「気候変動対策の柱」と強調し、防災対策の強化を国際社会に求めている。
原案は、公衆衛生や教育、農業などあらゆる政策分野が防災に関わるとした上で、災害時の被害を軽減するため、特に開発分野で防災の思想を取り入れるよう要請。
国連が年内に策定する2030年までの国際社会の新たな共通開発目標「ポスト2015年開発目標」をめぐる政府間交渉への反映も求めた。
また防災会議の議論が、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での温室効果ガス削減交渉につながることへの期待も表明した。
この他、防災対策を進めるに当たり、子供や若者、高齢者、障害者ら災害弱者と成り得る人々が積極的に参画するよう求め、女性のリーダーシップの重要性を強調。
事前防災への投資の必要性なども訴えた。
仙台宣言は2030年を見据えた国連の新たな防災指針と共に、18日の会議最終日で採択される見通しだ。
以上