「眼の会」榊原様より
防災関連情報としていただきました。
いつも、ご協力ありがとうございます。
被災地の現状と
進まない復興のもとでの人々の思い・・・。
みなさま、お読みください。
■:老朽化進む仮設住宅 雨漏り、カビ発生で肺炎不安も…
大震災の被災地に疲労色濃く
産経新聞2015年1月3日(土)13:23
東日本大震災から3年9カ月が過ぎたが、被災3県では11月末現在で
いまだ約8万5千人がプレハブ仮設住宅で生活を送る。
そもそも災害救助法では、仮設住宅の長期使用は「原則2年間」としか想定されていない。
住宅の老朽化も進み、月日とともに増していく人々の疲労を感じた1年だった。
海から湿った風が流れ、蒸し暑さが続いた今年の夏。
狭く気密性が高い仮設住宅では、多くの人が室内にしつこく発生するカビに悩んでいた。
宮城県気仙沼市の仮設住宅に住む50代の女性は、
平成23年8月の入居直後から室内にカビが生え、
掃除と布団干しを毎日欠かさなかったという。
カビの悪臭で、1部屋に3つずつ脱臭剤を置いていたことも。
しかし、同年の冬からせきが止まらなくなり、昨年肺炎と診断され、入院も経験。
「カビの掃除で吸い込んでいたのでは」と不安そうに話す。
今でもカビや結露、雨漏れに悩まされる日々が続く。
肌寒さが増してきた今年の秋。福島県南相馬市の仮設住宅を訪ねると、
住民の青砥(あおと)宗男さん(86)が玄関の壁に取り付けた木の板を指さした。
「これ、自分で作ったんです」板は、雨漏りやすきま風を防ぐためのもの。
3年以上がたった仮設住宅は劣化が進み、住民自ら修繕などの工夫を施した住宅を多く見た。
保温性に乏しい仮設住宅は「朝晩本当に寒い」と10月下旬にこたつを出し、
やがて来る冬に身構える男性もいた。
宮城県名取市の仮設住宅では、多くの高齢女性が津波の夢を見たり、
将来への不安が襲ってきたりして、「いまだ睡眠薬を手放せない」と話していた。
同県石巻市の女性(87)は4畳半一間に1人で暮らし、
「家に1人でいるとおかしくなってしまいそう」と漏らす。仮設住宅の物理的な劣化と比例するように、
住民の気苦労や不安疲労も増大している。
現在仮設住宅に住む多くの人は高齢で、自宅の自力再建は困難だ。
建てたばかりの自宅が津波に流され、
「もう住めない家のローンが3千万円ほど残って払い続けている」と打ち明けてくれた女性もいる。
そのため多くは市町が整備する集合住宅か、戸建て住宅で賃貸の「災害公営住宅」に移ることになるが、
完成したのは宮城県でも11月末時点で1割ほど。
用地取得などの遅れから、何年先に入居できるのかがはっきりしていない場所もあり、
被災者の不安をあおっている。
「若く元気な人は抜けていき、高齢者や体調に問題を抱える人が凝縮する」
石巻市包括ケアセンターの長(ちょう)純一所長(48)に取材した際、
これからの仮設住宅が迎える問題をこう表現したのが印象に残っている。
自宅を再建できる経済力や働き続けられる体力を持つ若い世代が抜け、
仮設住宅団地からも徐々に活気が失われている。
仮設住宅に残った人々にとっては暮らしが長期化するほど、焦りばかりが募ってしまう。
「ぜいたくは言わない。ここまでみんなに支えられて生きてこられただけでありがたい」
そう答え、決して十分とはいえない生活環境の中で、
毎日を懸命に生きる被災地の人々の姿を見てきた。人々が1日も早く終のすみかへ移り、
来年はより多くの人が新年を暖かな新居で迎えられるよう、復興がさらに進むことを願う。(安藤歩美)