大船渡市の作業所「かたつむり」より

ゆめ風基金様
 初めまして、大船渡市の作業所「かたつむり」の吉田と申します。
 この度の東日本大震災での復興支援心より厚く感謝申し上げます。
 私共は大船渡市において10年前より知的障がい児を持つ親20家族で結成した団体です。お茶会から始まり、それぞれの障害理解や悩みの共有、情報交換を経て子供達の成長に合わせた活動やイベントを行いながらやっと4年前に古いアパートを借り拠点を設け運営できるまでになっていましたが、不幸にも3月11日の震災で跡形もなく流され全てを失ってしまいました。
 私の自宅前にあったその作業所は築40年程のアパートは、お化け屋敷のように足を踏み入れるにはかなりの勇気が必要なほど朽ちかけ、蜘蛛の巣をはらい足場を確認しながらの片付け作業、和式トイレ(昔の小学校のような)を工務店から中古洋式便座をもらい会員のおじいさんに改修工事、仲間の電気工事屋さんに電気をつけてもらう、もらった畳を敷くなど何年もかけ手入れをしながらようやく作業所と言えるまでになったものでした。
 津波の翌朝、高台からみた無残な光景に悔しさと絶望で泣くことも動くこともできなかったことを覚えています。津波警報の解除の放送が終わらぬうちに神社の階段を駆け下り瓦礫を乗り越え向かったものの繰り返す余震で近づけず、3日目ようやく現場に行ってみると瓦礫すらうちの物ではなく思い出の品一つ見つけることができませんでした。
「かたつむり」、かたつむりのようにゆっくりでいいから確実に前に進もう、危ない時は殻で身を守り、進んだ後にはキラキラしたものを残せたらと皆でつけた名前です。
 活動拠点ができるまでは学校、地域、年齢、障害などの枠を持たずお茶会や行事、イベントを主におこない、拠点を構えてからは革細工、畑作業、資源回収、販売等を増やし地域交流を積極的に行い障害理解に努めました。特にも資源回収は、高齢者には分別(ラベル取りやダンボールの紐結び)が難しいので助かると喜ばれ、自分達が誰かの役に立っていると思える良い作業だったと思います。
 作業所と自宅があった場所は地域ごと更地となり、地区の人々もばらばらになってしまい今はどこに誰がいるのかさえわかりません。住む場所もなく避難所生活や仮設住宅で暮らさなければならない厳しい現実に作業所の再開など無理と解ってはいたのですがどうしても諦めきれず、市役所に行き何かしらの支援に該当しないか確認したところ、作業所に居住していなければならないということで行政からの支援はすべて対象外、せめて仮設の建物を・・の望みも絶たれ、もう「解散」するしかないと腹をくくったのですが、震災から3か月が過ぎた頃、高齢協「すずらん」の武田さんから連絡があり「作業所流されたでしょう・・一緒にやりましょう」と言われ、「解散」しか考えていなかった私にはあまりにも突然すぎて頭の整理が追い付かず直ぐにお返事することができませんでしたが、以前武田さんが話されていた障害者施設の現状への不安やこれからの施設の在り方、目指す作業所とは、などが私達の考えと一致していたことを思い出し、もしその作業所を作ることができればこの地域になかった新しいスタイルの作業所で「かたつむり」の思いと活動も継続できる、何より選ぶ施設が一つ増えることは被災で行き場を失くした障害者やその家族には大きな助けとなるはずと考え「すずらんとかたつむり」として頑張っていくことといたしました。
 6月から片付けと改修をスタートしたのですが、トイレが無い、水が出ない、ガスない、店がない、のないないづくしで作業は難航し、やっと付いた応急トイレは狭く車椅子や介助が困難でトイレの数も足りません。食事提供しているのですが台所も狭くシンク前に二人立つことが出来ない為、作業が効率良く出来ず利用者が多い時は定時に出せきれないことがあります。
 また 作業と休憩と食事を同じ部屋で行うため、ばたばたといった感じで気ぜわしく利用者が落ち着けない不十分な環境にもかかわらず9月10日の開所以降、利用者の数は増え、重心の方の希望やディサービスをおこなってほしいなどのニーズもあります。早い対応を考えると入浴設備も必要になるのですが、ただ高齢協(すずらん)さんには障害についてより詳しい方(専門)が少ない為 都度 説明と理解に時間を要す、といった部分も一部ありなかなか思うようには進みません。
 「すずらんとかたつむり」のスタッフさんは保護者さんや利用者さんにとても評判が良く、保護者さんや地域のボランティアさんが遊びに来るような感じで出入りしてくれていて、誰が誰だか、「利用者」「職員」という言葉もあまり耳にしないやわらかい、やさしい雰囲気はとても良く、親としてもうれしく思っています。
 同じように感じて、安心してお子さんを預けてもらえるように環境を整えたくお手紙書かせていただきました。
 何卒 よろしくお願い申し上げます。
 私達の10年の活動の記録と想いは流されませんでした。
 少しですが 残っていた資料を送ります。
                              岩手県大船渡市大船渡町字赤沢81
                              太平洋セメント赤沢社宅55-5
                              かたつむり  吉田 富美子

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