東北関東大震災障害者派遣プロジェクト8

被災地当事者派遣 報告書
   夢宙センター 内村恵美 大崎悟 河野彩佳
スケジュール
9月12日(月)岩手県に到着,被災地センターいわてにて定例会議参加 
9月13日(火)CIL盛岡にて長期ILP講座打ち合せ
9月14日(水)事務所勤務(ILP準備,夕食準備,事務仕事の手伝いなど)
9月15日(木)県庁訪問 遠野支部の掃除
9月16日(金)ユースパワーネットで沿岸部同行訪問,会議
9月17日(土)ユースパワーネット会議
9月18日(日)Oさんと外出 CIL盛岡長期ILP講座
9月19日(月)陸前高田へ同行、平下組に引き継ぎ たこ焼きパーティー
活動報告
①県庁訪問
 以前から被災地センターいわてに、大船渡市に住むSさんから、バリアフリー仮設住宅が外見はバリアフリーではあるが室内は全くバリアフリーでなく、とても生活しづらいとの相談が入っていた。Sさんは自分で関係機関に問い合わせたが返事はなく、生活しづらい状況が続いているため、ストレスから体調を崩しがちになっているとのことだった。仮設住宅の住宅改修費は国が負担することになっているが、そのことが市町村に周知されていないので、県から市町村に働きかけてもらうため、被災地センターいわてのスタッフと共にユースパワーネット会議に参加するいわき自立生活センターの小野君も合流し、県庁を訪問した。
 県庁では、担当者が不在だったため代理の人と話をした。Sさんの状況を伝え、バリアフリー仮設住宅のバリアフリーの基準は何なのか、住宅改修費について質問した。1点目については担当者が不在のため答えられないとのことで、後日センター岩手に回答をもらうことになった。2点目については、バリアフリー仮設住宅の住宅改修費は、国が全面負担することになっており上限については担当者でないと分からないとのことで、1点目同様、後日回答をもらうことになった。
 また、Sさんは今後車椅子での生活も考えており、体調を崩していること、今後症状が進行していくことも含め、改修していくにあたっては柔軟に対応していく必要があること、緊急性があることではあったが、仮設住宅を建てる際には当事者の声を聞き、障害者団体と連携をとりながら進めていく必要があることを伝えた。
障害者派遣プロジェクト8
障害者派遣プロジェクト8
②ユースパワーネットで沿岸部へ同行訪問
 ユースパワーネット(ユース)とは、自立生活センターの若手スタッフが集まり活動していて、被災地障害者センターいわて代表の今川さんもメンバーであり、ユースでも岩手を応援していこうと今回岩手で会議を行うことになった。
 メンバーで2組に分かれて沿岸部に住んでいる当事者を訪問した。私達は、田野畑村にあるハックの家と宮古市に住むAくん宅を訪問した。
 まず、ハックの家では、今までメインストリームの人たちが関わってきていたOさんと話をした。初対面の私達に、家族の事や自分の生活状況、今川さんとの出会いなど色々なことを明るく話してくれた。その中でも、パソコンをしたいけどできないことや、自分で好きな音楽を聴きたいこと、買い物に行きたいことなど自分のやりたいことをたくさん話してくれた。本人は色々なことに興味をもっており、やりたいこともたくさんあるが、社会資源が少なく実現できないのが現状であり、それがすごく悔しかった。日曜日のILP講座の前に内村と買い物に行くことになりその約束をした。
 また、メインストリームの人達が来たこと、一緒に買い物に行けたこと、焼肉パーティやその後のお泊りがとても楽しく嬉しかったようだが、皆が帰って行ってしまうのが寂しい様子で、内村にも「恵美ちゃんも帰っちゃうの?」と言っていた。1週間ごとに人が変わって色々な人が会いに行くことは、本人にとっていい刺激にもなっているが、その反面、寂しい思いをさせている関わりになっているとも感じた。そのため、これから関わっていく際には、関わり方を考えていかなければいけないのではと思った。
 次に、宮古市に住むAくん宅に行き、Aくん、母親、お姉さんに会った。何か出来ることがあればと思い、震災時の話や震災前の話などを聞かせてもらった。
 Aくんが住む地域はOさん同様、社会資源が非常に少なく、障害者がいることを隠そうとする家庭も多い。Aくんの家族は、将来Aくんが自立できるようにと考えているが、そのための社会資源がない。本人は、人と接することが好きでセンターいわての男性スタッフが訪問することをすごく楽しみにされているそうだ。これからセンターいわてでのイベントに誘うなどして繋がりを保っていき、自立につなげていければと思う。また、本人を中心にコミュニケーションをとりたかったが、表情や言葉から本人の伝えたいことを読み取るのが難しく、母親やお姉さんとの会話が中心となってしまったので、本人とコミュニケーションをとれる方法を考える必要があると思った。
 Aくん宅にはこれまでも何人ものボランティアが訪問しており、その度に同じ話をしているようだった。これは、Aくんだけでなく他の人を訪問する時も言えることだが、ただ話を聞きに行くだけではなく、行く側からも何か具体的な目的や活動を提示する必要があると思った。
その後、ユースで会議を行った。岩手県で生活をする障害当事者たちが出会い、繋がりを持てるような企画を定期的に行い、障害者エンパワーメントを応援していくことになった。
障害者派遣プロジェクト8
③Oさんとの買い物
 Oさんと盛岡駅前のショッピングモールで待ち合わせて一緒に買い物をした。欲しいものが3つ(洋服、食事セット、携帯ケース)あったが、時間が限られていたので内村のアドバイスでOさんが一番欲しいものから順に見ていくことになった。まずは、洋服が欲しいということで、近くの洋服屋さんに移動した。ズボンやTシャツを色々見て、鏡の前で合わせてみたり試着したりと楽しそうに悩みながら選んでいた。今までは、母親が選んできた地味な色の服を着ることが多かったようで、本人自身それが自分に一番似合うと思っていて最初は地味な色なものがいいと言っていたが、皆と一緒に色々探して鏡で見てみたりしていくうちに明るい色の服も自分に似合うということに気づき、最終的には明るい色の服を気にいっていた。
 お昼ご飯は本人に決めてもらったハンバーガーだったのだが、ハンバーガーを食べることも自分で洋服を選ぶことも10年ぶりだと言っていた。彼女が今まで沢山の経験を奪われてきたことを痛感したと同時に、この現状を変えていかなければならないと思った。
 その後、いったんILP講座に行き終わってからもう少し買い物したいということで、ショッピングモールに戻り、食事セットと携帯ケースみてまわった。Oさんと過した一日はとても楽しかったのと同時に、色々なことを考えさせられる一日でもあった。 
 
障害者派遣プロジェクト8
④CIL盛岡 長期ILP講座「介助者との関係」
 リーダーを含め7名での参加。リーダー以外の参加者は自立しておらず、施設生活・親元での生活の方ばかりだった。
 施設職員や親に気を遣いながら生活している現状が見えた。
もしCILの介助者に入ってもらうとしたら何をしたい?という質問に参加者は「自分が出かけたい時に出かけたい!」とみんなが言った。ここででも、制度利用のしにくさ、社会資源の少なさを感じた。
 内村が自分史を含めた自立生活での介助者の利用の仕方や関係性作りで大切に思う事を話した。
みんなからの感想では、自分で普通と思っていたことが心に負担がかかっていることがわかった、自立生活への希望が持てたなど話していた。
 11月に長期ILP講座を終えた後、参加者たちが一歩自立へ進んでいることを期待したい。
⑤陸前高田へ同行
 センターいわてで支援している陸前高田の仮設に住んでいる視覚障害者の方との打ち合わせに同行した。学校に隣接されたプレハブの仮設に到着してまずバリアフルな状況にビックリした。ここには車椅子の障害者や高齢者は住めないと思った。聞けばバリアフリーと見えても部屋の中はバリアだらけの仮設だとか、バリアがあるから仮設は諦めアパートに住んだりしている障害者や高齢者の方が多いと聞いた。当然、視覚障害者の部屋も入り口に大きな階段が3段もあり玄関にも段差が。
 打ち合わせを簡単に済ませ次回のための確認作業の為に視覚障害の方と奥さんに車で道案内していただいた。その時に陸前高田の被災した現状を目の当たりにした。沿岸部の住まいや野球場だった場所は地震で海の下になっていたり一面何にもない土地がずーっと続き、とても人が以前住んでいたとは思えなかった。地震と津波で風景は一瞬に変わってしまい、まだまだ復興には時間がかかるのか・・・元には戻らないような・・・そんな感じがして怖くなった。
 だが、車を少し走らせたら段々と人の姿が見え、仮設のコンビニやスーパー等が建っていて、この近くの高台の場所に仮設も建ってきているらしい。「再生」は始まり、東北は震災以前より素敵な所に生まれ変わろうとしている。それを肌で感じれて良かった。
障害者派遣プロジェクト8
⑥たこ焼きパーティー
 19日の夕方に夢宙からの支援2組目の平下(兄)組も来たので、定例会議後に被災地障害者センターいわて、CIL盛岡、夢宙の交流会をした。
朝早くから夜遅くまで活動し、いつも仕事モードのセンターーいわてのスタッフ達が無邪気に笑って沢山食べてくれている姿を見てホッとした。
 始めは夢宙メンバーがたこ焼きを焼いていたが、次第にみんなで焼き始め、たこ焼きをコロコロ転がしながら、岩手の状況や各センターの日々の活動、個々の趣味や恋愛について色々なことをたくさん話して盛り上がった。
 最後に、一週間を通して感じたことは、震災前から障害者を隠そうとする家庭が多く閉鎖的地域があり社会資源が本当に少ないこと、外に出たいと思っている障害者がたくさんいることを強く感じた。
 今!障害当事者が声を出さないといけない、じゃないと震災後、復興していっても以前と変わらない状況になってしまうと思った。
 今!障害当事者の力を発揮するときだと強く思う!!

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *