寝屋川監禁死事件への声明文紹介

自立生活センターで活動する精神障害当事者の有志および賛同人による、
寝屋川監禁死事件への声明文を紹介させて頂きます。

以下、声明文です。


寝屋川監禁死事件への声明文

2018.1.18
自立生活センターで活動する精神障害当事者の有志一同&賛同人一同

 私たちは障害種別を超え、障害者の地域での自立生活を目指す全国の自立生活センターで活動する精神障害当事者です。私たちは今回の寝屋川市での事件に対し、深い悲しみと憤りを感じ胸が痛みます。被害者の方には心よりご冥福をお祈りするとともに、二度と同様の事件が起こらないことを願っています。
(自立生活センターの枠を超え障害種別を超え多くの賛同者の方が声をかけてくれました。(賛同人一覧ご参照))

大阪府寝屋川市で33才の女性が自宅で衰弱死した事件で、両親が2017年12月23日逮捕されました。自宅に作ったプレハブの小部屋に15年前から監禁し、衰弱しているのを知りながら放置して死亡させた疑いで両親は1月2日に再逮捕されました。発見時、女性は服を着ておらず、体重は19キロでした。その後の警察の調べで、両親が「自分たちが食べ残した食事を与えていた」「去年1月ごろから、一日1食しか与えていなかった」「室内に置いた簡易トイレの掃除は2週間に1回程度だった」と供述していることが分かりました。両親(両容疑者)は、女性の様子を監視カメラで撮影し、記録していたそうです。女性が精神疾患と診断された翌年の2002年ごろから、自宅内に間仕切りした2畳の部屋に監禁していたとされます。警察は不衛生な環境下で監禁を続けていたとみて調べています。

今回の事件について私たち精神障害の当事者としては、精神障害者の人権はもとより、人間としての尊厳を奪う行為、命を奪ったことを断じて許すことが出来ません。現時点での思いを述べさせていただきます。

 

1.「事件そのものに関しての抗議・要望」

① 座敷牢に入れていたことは、人間としての尊厳を奪う行為です。その上死に至らしめたことは、断じて許すことが出来ません。このことに断固抗議します。

② なぜ行政、児童相談所などの介入ができなかったのか、行政・児相などの対応に疑問を感じます。何らかの介入があれば本人の命や尊厳を奪われなかった可能性があります。親に対しても正しい支援があればこのような悲劇は起こらなかったと考えます。今後二度とこのような事件のないよう行政・児相の対応の改善を求めます。

③ 一部報道では、子供の頃から体中に痣があったり、いつも同じ服で可哀想だった、暴れるようなことはなかったなど、元同級生のインタビューなどが報じられています。事実であれば幼少期からの虐待が元で精神疾患を発症した可能性があります。虐待の事実を明らかにするとともに、虐待に対しては断固抗議します。学校、教育委員会は虐待に敏感になり、疑いがある場合の対応改善を求めます。

④ 15年間に及ぶ監禁・虐待は例えどのような理由があろうとは許すことが出来ません。事件を起こした両親に対しては人の命と人生を奪った罪の重さを認識するためにも、決して減刑嘆願などを起こさないよう強く求めます。

⑤ 現在両親は監禁と保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕されていますが、17年間に及ぶ監禁と人間性を奪う虐待、そして命を奪ったことに対する罪と量刑が適当なのか。今後の裁判を注視したいと思います。

⑥ 監禁されて家の中の様子がわからなかったとはいえ、隣近所、親戚、友達などがなぜ異変に気付かなかったのか疑問と憤りが残ります。他人事という一人一人の無意識の個人主義や、結果として「何もしなかった」「何もできなかった」ことに抗議します。

 

2.「社会に対しての問題提起と要望」

① 今回の事件で精神疾患があるなら病院に入れたらよかったという意見をテレビなどのメディアで聞くことがあります。健康なら地域社会、病気・障害なら病院・施設という考え方は社会的入院を増やし、人と人との分断を生み、精神障害者への差別と偏見を生みます。また分断は障害者のみならずすべての人間にとって平等であること、助け合うことなどを奪うことになります。メディアは安易に人と人との分断を生むような発言を控えてください。

② 自宅で監禁・虐待を受ける障害者は現在も今回の事件に限らず存在します。特に精神・知的障害、言語障害などコミュニケーションが取りにくい障害者に対する虐待は数多くあります。精神科病院では日常的に「暴れるから」「手に負えないから」という理由で監禁・拘束が行われています。障害者への監禁・拘束が二度と起こらないよう、今回の事件を風化させることなく、精神障害者の人権侵害について問題化することを求めます。

③ この事件には日本の閉鎖的な家制度が、近所の人々、親戚、友達などの介入を許さなかった一因であると考えます。家族のことは家族の責任というのではなく、地域社会全体でお互いに支え合い、子供を育てるシステムと人の意識の変革を求めます。

④ 明治時代には国が「座敷牢」を認める法律を作り、戦後も精神保健の名のもとに、隔離・拘束、虐待が「治療」として日常的に行われています。そのような背景がある中で、今回の事件は、両親が「精神障害で暴れるから監禁した」と話しており、精神疾患を持ったら監禁しても仕方がないという明治以来の精神障害に対する誤った考え方があったと思われます。私たちはどんなに重度の精神疾患があっても、自分の住みたい地域で医療や自立のための支援を受けながら暮らしていく権利があります。地域で自立して生きていくための介助や相談などの公的なサービス、地域での支え合い、患者の尊厳を奪うことのない透明性のある、本人を守るための医療が必要です。

⑤ 親を追い詰めたのは、社会そのものです。家族に対しても相談支援など精神障害者が一人の人間として尊重されるためにも家族支援は当事者の支援とは別に確立する必要があります。

⑥ 精神障害者と家族に対する地域社会の差別をすべての人が今一度考えて欲しいです。例えば、日本の家制度の閉鎖性と事件について、親に対するフォローがなかったこと、本人に対する繋がりがなかったこと、「関わらなかった市民」の罪、などです。全国の市民一人一人の問題であり、未然に防ぐことが出来たかもしれないし、社会が変わっていかなければ今回のような事件の再発を防ぐことは出来ません。

⑦ 国や行政、病院に対して二度と監禁などが行われることのないように公的なサービスを充実し、地域社会に広めていくことを求めます。

 

呼びかけ人:自立生活センターで活動する精神障害当事者の有志(順不同)
吉岡利明 ( CIL下関 )
児玉朋己 ( 障害者生活支援センター・おのころ島 )
船橋裕晶 ( 自立生活センターリングリング )
田島裕美 ( 八王子精神障害者ピアサポートセンター )
竹沢幸一 ( 八王子精神障害者ピアサポートセンター )
陶延彰   ( 自立生活夢宙センター )

連絡先:
自立生活センターリングリング
兵庫県神戸市兵庫区中道通6丁目3-12-101
TEL/FAX 078-578-7358 E-mail ring-ring-kobe@extra.ocn.ne.jp  担当:船橋

八王子精神障害者ピアサポートセンター
東京都八王子市明神町4-14-1 3F
TEL/FAX 042-646-5040 E-mail peersup_7777@hotmail.com  担当:竹沢

賛同人一覧(順不同):
加藤真規子 ( NPOこらーるたいとう )
高原里緒 (北部自立生活センター 希輝々 )
山口江妙子   (NPO自立生活支援センター フリーダム21 )
瀧柳洋子 ( 基準該当事業所 「新しい空」代表 )
泉州☆精神障害者倶楽部 『青い鳥』  連絡先 大野忠雄
齋藤あきら
吉田みち(自立生活センター三田)
自立生活センター三田
橋本紗季(自立生活センターリングリング)
植田美樹
特定非営利活動法人沖縄県自立生活センター・イルカ
北部自立生活センター希輝々
自立生活センターインクルーシブ
自立生活センターまんた
自立生活センター南十字星
ピープルファーストハイビスカス
障がいのある人もない人もいのち輝く条例づくりの会
鷺原由佳(DPI日本会議)
CILだんない
大門広明
大門友穂(自立生活センターリングリング)

 

事件に関する精神障害当事者のコメント

吉岡利明 ( CIL下関 )
「1900年精神病者監護法は、相馬事件をきっかけにできた日本初の精神病者に関する法律。精神衛生法(1965年)まで続いた。患者の監禁を(私宅監置の合法化)、治安維持中心の考えで構成されている。医師の診断の義務はない。平成に入って2002年にこの寝屋川事件は始まった。私がくしくも前年に社会復帰のために援護寮に入所した翌年にこの事件は起きた。私の自立の始まりの翌年から、私宅監置され、私にはこの事件は運命的な事件に感じた。特に21世紀になっても私宅監置があることに驚きを感じた。」

児玉朋己  ( 障害者生活支援センター・おのころ島 )
「精神疾患を患っていたから監禁した、という言い訳には憤りを禁じ得ません。精神病者なら監禁しても許されるという思い込み・ドグマを、この日本からなくしたいと強く感じます。精神病者に対する監禁・拘束の不当性について、この事件をきっかけに深く議論が行われるのを期待します。」

船橋裕晶 ( 自立生活センターリングリング )
「亡くなった被害者の女性は、どれだけ絶望の中で死んで行ったのだろうか。彼女は親からも地域の誰からも愛されず知られず、人としての尊厳を奪われ、たった一人孤独に飢え・凍死しなければならなかった。
しかし、同じように病院で強制的に監禁・拘束され、時には虐待を受け、それが「治療だ」「精神障害者だから仕方がない」「暴れるから仕方がない」と人の尊厳を奪う行為も肯定され、途方にくれている「精神病者」が何万人も社会にはいるのだ。監禁や拘束は一体誰を守っているのだろか?このような事件を繰り返さないためには、一人一人が差別や常識について考え、違いを受入れ近づき合わないといけない。」

竹沢幸一 ( 八王子精神障害者ピアサポートセンター )
「誰もが地域で自立生活が出来るようにしたい。障害者を閉じ込めても仕方ないと言う風潮には断固反対です。」

陶延彰( 自立生活夢宙センター )
「今回はこのような事件がおきてしまい、いち精神障害者としてすごく驚いたのと娘さんの不遇な結末に心を痛めております。親が子どもを監禁をしたり食事を充分に与えなかったりしたのは犯罪ですが、私は精神疾患の人に対する対応の無知さなど別の問題にも焦点をあてるべきだと考えます。またこの家族に対して、適切な時期に周囲の人による適切な支援があれば全然違った結果になったのだろうと思います。」

山口江妙子 ( NPO自立生活支援センター フリーダム21 )
「精神の病の人は気が狂っている、恥ずかしい病ではありません。どうして隠さなければならなかった、どうして監禁されなければならなかったのでしょうか。被害者の女性がどんな思いで亡くなっていったのかを考えると心が痛みます。一人の人間として見られていない。まだまだ、精神の障害者に対する偏見や差別はきつい。この事件のことを忘れないで、いろいろなところで議論されることを望みます。」

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