団体報告 その⑥

■報告⑥ 松野町 保健福祉課 上本さん

《被害状況》
 松野町は愛媛県で一番小さな町で、災害当時の松野町の人口は約4200人。現在は3660人に減少。高齢化率は46.72%と約半数となっています。平成30年7月の災害は72年ぶりの大水害で、災害救助法も適用されるほど甚大な被害が出ました。
 
《小回りが利いて顔と腕の見える関係》
 活動拠点の診療所は松野町唯一の入院施設で、保健センターも併設されるなど、重要な医療機関になっています。町に診療所が一ヶ所しかないため、近隣市町に、二次・三次医療機関を設け、病診連携体制を整えているそうです。
 診療所のドクターは、病気の時だけではなく日頃の生活の部分まで視点を伸ばして関わるなど、住民の心強い存在となっています。
 また、障害福祉、高齢者福祉、包括、衛生士などが同じフロアにいることで、常に連携が取れ、情報の共有もタイムリーに行うことができ、以前は『顔の見える関係』を合言葉にされていましたが、今は、もう少し前に進んで『小回りが利いて、顔と腕の見える関係』を合言葉に活動されています。
 ここでの「腕」というのは、多職種との連携のことで、お互いに尊重し、どんな機能や役割を持った人なのかというところまで見える関係のこと。この連携は28年ほど前から継続して積み上げられ、今回の災害ではこの連携が活かされたと仰っていました。
  
《個別避難計画》
 平成24年から救急医療情報カードを作成し、対象となる住民宅への設置も開始されました。このカードの内容は、避難所への移動手段の追加など、年々改変され、避難行動要支援者の個別避難計画にも位置づけ、直近では約400世帯に設置されています。
 また、このカードはマグネットが付いたクリアホルダーに入っていて、冷蔵庫などに貼れるという工夫が施されており、1人暮らしの方の救急搬送時には非常に活用されているとのことでした。
 
《「わがこと」として考える大切さ》
 最後に上本さんは「生活を基軸に考えると、医療、保険、福祉だけではなく、地域の全てが繋がっている。それら全てが大切で、繋がることによって住民の安心ある暮らしのベースになる。地域づくりの道筋が、わが町らしい地域包括ケア体制につながっていく。
 住民の一人一人が「わがこと」と思うことで、行動が変わり地域が変わる。人は、心が動けば動き出す。住民の力を信じ、活かす。住民が主役、地域が舞台。私達、行政はあくまでも黒子として支援する。
 今だからこそ、つながり、絆を強く、地域の声から、現場から課題を明らかにして、対話から目指す方向性を共有、役割を持って実践、共有する。
 それが、わが町らしい地域包括ケア体制に繋がっていき、それが災害時にも活かされていると思っています。」と報告してくださいました。