東日本大震災等に学ぶ大規模災害時の障害者支援
1.ゆめ風基金とは?
●設立経過・・・1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、阪神への長期支援と今後の災害に備えるために設立された
●10年目を契機に災害支援に防災を加える
災害後の支援だけでは限界がある。災害による支援をできるだけ少なくするほうが、被災者は助かる。
障害者市民防災まちづくりアイデアコンテスト、障害者市民防災提言集、防災の取り組みへの助成金創設
今回の支援の仕組み
現地の活動拠点として3県に被災地障がいセンターをそれぞれ設置
2. 災害が起こったときの障害者市民の必要な支援
過去の震度7の地震
発生年月日 |
地震名 |
死亡者数 (行方不明者) |
全壊数 |
半壊数 |
1995/1/17 |
兵庫県南部地震 |
6434(3) |
10万4906 |
14万4274 |
2004/10/23 |
新潟県中越地震 |
68 |
3175 |
1万3808 |
2011/3/11 |
東北地方太平洋
沖地震 |
1万5880(2700) |
11万8480 |
17万9697 |
@ 災害時に障害者市民が必要とする支援
a.避難をうながす情報の伝達手段の確保・・・・特に聴覚障害者
b.避難所までの移動手段の確保
c.避難所のバリアフリー化と避難期間の生活支援(ヘルパーなど)
d.常備薬を必要とする人や医療を受けている場合は、医療支援
●安否確認について…日常の情報共有が必要か?災害時にのみ公開という方法もある。
●全ての障害者市民が上記の支援を必要としているわけではない。 障害者市民の身体的な要因と家族や地域でのつながりなどの環境的な要因、災害の危険性の
3つを総合して、支援を考える必要がある。
e.仮設住宅のバリアフリー化と生活支援
A今回の災害での支援
●基本的な情報の把握
a災害状況・・・災害の種類や規模、被災件数
b地域情報・・・人口、面積、交通、行政対応、病院
c福祉情報・・・サービス提供事業所、社会福祉協議会(ボランティアセンター)
ホームヘルパーやガイドヘルパーなどの利用者、サービス提供者がともに少ない。
(施設サービス中心で在宅サービスが弱い)
幼いときから寮生活など、入所の福祉サービス経験が多い
福祉サービスを提供する事業所数(特に訪問介護、移動支援)が少ない
→入所施設を利用しない場合は家族が支えることが当たり前になっている
●時間とともに変わるニーズと支援のあり方
4期に分けた活動・・・阪神大震災から今回の支援について4期に分け支援活動を展開
第1期…災害発生後から仮設住宅建設が始まるまでの、緊急な支援活動をおこなった時期。
第2期…仮設住宅建設が始まり、ほとんどの人が入居を終えた時期。
第3期…仮設住宅の入居が完了し、震災後1年目を迎えるまでの時期。
第4期…震災後1年目を迎えてから2年目を迎えるまでの1年間で、復興住宅へ避難者が移るまでの時期。
第1期の特徴は避難所に避難している障がい者が少ない中、在宅になっている人も含めて障がい者の安否確認をどのようにして行うかが課題。また出会った障
がい者家庭に福祉機器、医療機器、生活物資などを届けるとともに、医療機関への送迎サービスや避難所などにヘルパー派遣などを行うもので、緊急な支援が必
要、対応のスピードが優先される。
第2期では仮設住宅の申請手続きや、仮設で必要なものの提供。またグループホームなどに閉じこもっていた人などから、買い物など外出サービスなどのニー
ズが出てくる。
親戚の家に身を寄せていた人も、仮設住宅に移ってくるので、この時に新たな障がい者の方に出会うことがある。
第3期になると外部からのボランティアが激減してくることや、地元の福祉サービスが復活することを考え、地元団体とより連携を深めながら、不足する支援
についてどう継続していくか方針作りが必要。
活動拠点の再構築や地元における担い手づくりを視野に入れて活動する。
第4期は地元を主体とした支援への移行時期。災害支援から復興支援へと切り替わる。外部から必要以上に干渉しないことが大切だが、支援金をはじめ、被災
地への支援を継続していくことも必要で、バランスを考えながらの支援となる。
また地元で長期の支援を担っていく人材育成なども支援の対象となる。
→全体の方針として丁寧に個別支援を行うことが大事
3.活かされない被災地の教訓と今後の課題
@安否確認と名簿の関係
災害のたびに障がい者の安否確認、避難所の問題、仮設住宅の問題が繰り返される
安否確認は名簿の問題ではなく、コミュニティの問題
→南相馬の名簿公開が話題になっているが、岩手では行政・福祉職員などの動因で沿岸部の安否確認を行った。
親戚宅やアパートを借りた人などへの支援がきちんとできていない。またヘルパー派遣をもともと利用していないことから、ニーズあがりにくい状況などをどう
打開していくか?
被災した人にホームヘルプを行うことは、その後も利用継続をすること見込まれることから、新たな事業所立ち上げも必要になる。
災害時における個別支援計画を誰がどのようにして作るのかが現在のガイドラインでは明確でない。具体的な対策が必要。
被災者の定義の確認・・・家は流されてなくとも、交通機関への打撃や医療機関・スーパーなどの被害のため、以前の生活が継続できない人がいる。ライフライ
ンのとまったところなど、一時期的に支援を必要とした人など。
A福祉避難所について
多様な避難場所の確保
小学校などの指定避難所については、障害者が安心して避難できるスペースの確保と窓口、支援者の確保をあらかじめ定めておく必要があり、福祉避難所エリ
アや窓口等を含めた学校避難所運営マニュアルの策定と、地元住民を主体で障害当事者が参加可能な避難所開設訓練の実施を広める必要がある。
避難所以外に避難している障害者への支援策
また障害者は家が居住可能であったり、近くに親戚や知人がいる場合は指定避難所を敬遠しがちであることから、障害者個々人の避難先についてふさわし
い場所をあらかじめ選定しておく必要がある。その場合に指定避難所を利用できない障害者について速やかな支援を行えるよう、想定される避難場所の把握と福
祉・医療物資の調達方法などをあらかじめ決めておく必要がある。
福祉避難所の人員確保を明確に
福祉避難所については人員確保を福祉避難所協定締結先に求めるのではなく、地域や他の福祉機関と連携し、行政責任のもとに必要な人員派遣を行う仕組みを
確保することが必要である。
B災害時における障害者支援センター設置の必要性
3月時点で国に登録をした2800人もの福祉職員が被災地にほとんど派遣されなかった。
新潟県中越沖地震では県が主導し、発災後3日目に支援センターを設置。1週間で障害者手帳所持者の安否確認を行った。
C仮設住宅の建設について
●建設・設置基準
障害者がまともに住める仮設住宅がほとんど建設されていない。当初は砂利道。スロープがやっとつけられても、間口が狭い。家の中は段差だらけ。
みなし仮設住宅は設置そのものの基準が周知されておらず、知らずにいた人も多かった。家賃限度や改修なども同じ。(そもそも自力で見つけることが障害者
には困難)
●改修基準
住宅改修について国は6月段階で改修費用を出すとしたが、市町村には伝わっていない。岩手では10月末になって県から市町村への通知が出た。ただ山田町
では改修事務の受任をせず、現在も窓口がきちんと定まっていない。
●環境面への配慮
移送サービスやヘルパー派遣など新たに必要になったニーズにほとんど対応できていない。
とりわけ建設担当の部局、福祉部局、予算を持つ復興局の連携がきちんとできていなかった。
縦割り行政の弊害をどのようにしてなくすのか?
●すべてをユニーバーサルに
すべてユニバーサルにする、あるいは障害用住宅の基準を定めるなど、きっちりとした建設マニュアルが必要と思われる。
.4.障害者・高齢者に対する国の取り組みの高まりと各方面の取り組み
@ 内閣府 災害時要援護者支援ガイドラインについて
2005年3月 災害時要援護者の避難支援ガイドライン作成(旧ガイドライン)
2006年3月 ガイドライン改定(新ガイドライン)
2007年3月 災害時要援護者対策の進め方について(報告書)
a.旧ガイドラインのときに「避難準備情報」が設けられる
b.夜間の避難呼びかけの危険性と空振りを恐れないための行政と市民との合意の必要性
c.新ガイドラインで情報共有方式による災害時要援護者把握が強調される
A国交省 水防法改正
2005年 福祉施設への連絡を防災計画に盛り込むこととする
B消防庁の取り組み
2006年3月 災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて
(災害時要援護者の避難支援アクションプログラム)
C全国民生委員・児童委員連合会の取り組み
設立90周年記念事業 「災害時一人も見逃さない運動」2007/10/1〜2010/11/30)
D厚生労働省 2008年6月 「福祉避難所の設置・運営に関するガイドライン」
E内閣府 2013年3月 災害時要援護者の避難支援に関する検討会報告書
.
5.大規模災害に備えた地域の仕組みづくり
@ふだんのまちづくりの課題が、災害時にはより大きくなって現れる。
→コミュニティの強いまちが福祉にも防災にも強い。
基本的な考え方
a.防災を通じて、幅広い人たちのコミュニティをつくることができる
防災を通じて多世代交流、支援を受ける人と支援をする人との交流が進む。
単に日ごろから地域の人とつながりを持ちましょうと言われても障害者はどうすることもできない。
b.学校での防災のあり方を考え直す
中学生や高校生は避難所の運営にあたって大きな力となる。しかし日頃そのような訓練ができていない。
A防災訓練の見直しと避難所訓練(体験)のすすめ
大規模災害では、公助としてできる部分が少なく、自助、共助による避難が重要
しかし、これまでの防災訓練では、そのことがほとんど市民に知らされていない。
a.どこに逃げるのか、誰が支援を行うのかが災害時要援護者には最大の課題
安否確認3つの段階をしっかりとらえ、日頃からどうするかを考えておく
b.できるかぎり身近な施設を福祉避難所にしていく
指定避難所の問題点を考え、改善もしくは近辺の施設の利用を考えると共に、地域住民の協力を得やすい体制をつくる。
指定避難所における要援護者支援を含めた避難所訓練
c.地域全体の拠点となる要援護者支援の体制づくり
ボランティアセンターと連携のとれた当事者・関係団体による支援の仕組み作り
拠点となる支援体制づくりのための訓練
B 避難所でなく「避難支援センター」としての地域住民の助け合いを
家が無事な人も集まって、地域全体で困った人を支えあうしくみが必要
<事例> ゆめ風基金が大阪市城東区に提案した福祉避難所モデル案
身近な避難所
大規模災害発生後、すぐに避難ができるように各小学校区の指定避難所を福祉避難所として整備。
多目的室や特別教室の活用
要援護者支援のための人材確保
要援護者支援のための防災備品の整備
拠点避難所
役割
身近な避難所に避難している要援護者への支援
身近な避難所で暮らせない人のための一時的避難場所
身近な避難所で暮らせいない人ための避難場所斡旋。
要援護者の災害支援に関わる人材確保と必要な場所への派遣
要援護者支援のための情報収集・発信
生活や各種手続きについての相談
災害ボランティア活動支援センター
城東区民ホールは大規模災害時に災害ボランティア活動支援センターとして活用することとして、区役所と社会福祉協議会の間で協定が結ばれている。城東区
では協定内容に要援護者支援が含まれている。