震災から7ヶ月 被災地の救援活動はいま

ゆめ風基金機関紙NO.54より
震災から7ヶ月 被災地の救援活動はいま
                                  ゆめ風基金理事 八幡隆司
 早いもので震災から7ヶ月が過ぎました。見知らぬ土地で車のカーナビを頼りに沿岸部へいくものの、当初は沿岸部の道路が浸水や瓦礫でほとんど通れなくなっており、随分目的地に着くのに苦労した覚えがあります。今はほとんどの道が復旧し、瓦礫の撤去も進んで場所によっては以前の状態が想像つかないところもあります。
 しかし徐々に地域間の状況に格差が出始めてきています。
 津波被害の大きさ、地形の問題、行政の取り組みの違いなどによって、見た目の復興度合いにも、被災者の生活状況にも格差が広まりつつある感じがします。
 8月末時点の避難所の状況は、岩手県がピーク時に5万4千人が避難していた避難所をすべて解消したのに比べ、宮城県では仮設住宅の建設が遅れているため、いまだ3675人が避難所生活を続けています。
 福島県では最大約2500人が避難していたビッグパレットが8月31日に閉所となったものの346人の避難生活が続いているほか、県外避難をしている障がい者も含めて、劣悪な環境のまま避難所生活が続いているところが存在しています。
大船渡の仮設住宅
大船渡の仮設住宅
 一方でどこの自治体においても仮設住宅のバリアフリー化について十分な配慮がされず、障害者、高齢者を中心に仮設住宅での生活のしんどさが続いている状態です。
 先日も「障害者用の仮設と聞いて入ったのに、トイレも風呂も狭くて使えない。台所にはまともに入れない」と仮設住宅の環境の改善を訴える連絡が被災地障がい者センターいわてに届きました。
 仮設住宅の巡回体制はできつつあるものの、そこで要求される移送サービスや障害者への支援体制は何もできていないといって過言ではありません。
でしゃばらず、離れすぎず
 現在ゆめ風基金が支援できているのは岩手県・宮城県の沿岸部と福島県に限られています。それでもその範囲はあまりに広大で、現地スタッフが支援のために移動する距離は200キロ、300キロが当たり前のようになっています。少しでも移動距離を減らすために様々なところに拠点づくりを進めていますが、なかなか物件を見つけることができない地域もあり、まだ全ての計画が順調に進んでいるとはいえません。
 ただ当然のことながら東北の冬はかなり厳しく、県外のボランティアが雪道を運転して支援を続けることは避けなければと思っています。冬が来る前にどれくらい地元の人と協力関係を結び支援を続けるかが大きな課題であり、私たちのような県外ボランティアがでしゃばり過ぎないようにすることが大事だと考えています。
 しかし雪の少ない地域では私たち自身も活動を続けるなど、全てのことが地元任せにできるわけでもないので、バランスを考えた支援をしていきたいと思っています。
 岩手県の北部から説明すると、田野畑村というところについては「ハックの家」という障がい者団体に委託業務という形で障がい者支援をお願いすることにしました。
宮古市は自分たちが継続して活動できる穏やかな気候であるため、活動拠点を新たに設けることとし、場所も決まって改修工事を進めています。
 山田町大槌町では地元の福祉団体が障害者支援活動を進めているところで、連絡をとりあっています。
 釜石市にはこの間協力関係を持っているAJU自立の家という障がい者団体が支援拠点を設置予定です。
被災地障害者センター大船渡の事務所
大船渡の事務所。苦労してようやくこの物件に辿りついた。
 大船渡市では地元の人と連携して支援を進めることを決め、8月末から仮事務所で活動が始まっており、9月中には正式な事務所がオープンします。
 陸前高田については「すずらんとかたつむり」という地元の障害者団体に支援をお願いし、協力関係を進める準備をしています。
 宮城県の北部については登米市に既に拠点があり、南三陸を中心に活動を継続していますが、石巻にも新たな活動拠点を作り、地元の障害者スタッフとともに継続した支援を行っていきます。
 福島については県外避難をしたいという障害者のために、新潟で避難者を支援していることに加え、県外の人たちが連携してどう避難生活を支えるかという会議をするなど、具体的な方法を模索しているところです。
同じ過ちを繰り返さないために
 前回の新潟での2回の大地震も含め、災害時の支援活動として「障害者を探すところから始めなければならない」「避難所や仮設住宅の問題も全く改善されていない」など、過去の災害がきちんとした教訓となり、次の災害の備えになっていないことは本当に悲しいことだと思います。大災害の犠牲に学ぶ教訓が、また次の災害に役立たないのでは亡くなられた方に申し訳ないとしか言いようがありません。
 その意味では今の支援も大切ですが、今後それぞれの町の中で災害にどう向き合うかということが一番問われているのだと思います。
 ゆめ風基金としてこの5年あまり大規模災害に備えた障害者の防災・減災活動を展開してきましたが、そのことが浸透していればどれだけ今回の災害支援がスムーズに行えたかと思ってしまうのです。
 だから現地での支援活動も続けながら、ゆめ風基金として「東北で障害者が苦しんでいるのは人ごとではない、みなさんの地域でも取り組んでもらいたいことがいっぱいある」ということを訴えていきたいと思っています。
 安否確認や避難所の問題は単に災害に備えるということだけでなく、日ごろのコミュニティに関わることが大きくあります。災害が起きたときにできることは普段からのつながりでできる通常のことであって、決して災害が起きたからといって特別なことが急にできるわけではないということです。
 もちろん今の支援についてできるだけ全力で挑みたいと思っています。
 「みなさんの支援があって本当に助かった。でもまだ困っている人がたくさんいる。申し訳ないがまだまだみなさんにがんばって欲しい」という手紙をいただきました。この方は行政支援のあり方に悔しい思いをしたという思いとせっかく支援を頂いたが、その夫は既に亡くなったということも綴っていました。
 東北の思いを何とか全国に届けるため、これからもしっかり活動を続けていきたいと思います。

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