特定非営利活動法人 ゆめ風基金

特定非営利活動法人 ゆめ風基金

〒533-0033:
大阪市東淀川区東中島1-13-43-106

TEL:06-6324-7702
FAX:06-6321-5662

MAIL:info@yumekazek.com

障害者救援活動にご協力ください

障害者救援金
送り先
郵便振替口座
00980-7-40043
ゆめかぜ基金
その他の振込方法

ゆめごよみ風だより No.92 | 2020/9/18発行

リレー・エッセイ 災害と障害者 第66回防災・復興計画に複合差別の視点を!

女性と障害者と災害

2015年3月に国連の防災会議が仙台で開催された時、私は『女性と防災』テーマ館に参加しましたが、多くの女性達の中に、障害者はほとんどいませんでした。ここでは、防災や復興計画の中にジェンダー視点が欠落していること、災害によりDVやレイプなど性被害が増加し、また深刻化する問題点が指摘され、女性がリーダーとして関わることの重要性が語られました。ところが、障害者・高齢者・子どもは弱者として一括りにされ、保護すべき対象として位置づけられており、女性であり障害者である私は、複雑な思いで聴いていました。
一方、別の会場では『障害者と防災』をテーマとしたセッションも開催され、「仙台防災枠組」(2030年までの国際的な防災指針)には障害者参画が明記されました。

障害のある女性の複合差別

DPI女性障害者ネットワーク(女性ネット)は、2011年東日本大震災の時に、『あなたの周りにこんな方がいたら』*というリーフレットを作成し、避難所にいる人や支援をしている人たちに発信しました。これは注意喚起と、どのような配慮が必要かを簡単にまとめたものですが、特に障害女性への同性介助やトイレ・着替え等のプライバシーを配慮するなど、女性の視点を入れることを求めました。
障害者であり女性であることによる複合的・交差的な困難を複合差別といい、障害者権利条約第6条にも明記されています。
例えば、DVシェルターにはバリアフリー構造や介助者の問題があるため、障害のある被害者は、障害者福祉施設に入ることになっていますが、訪問者は誰でも入れるため、プライバシーが守られず、シェルターとしての機能を果たせないのです。
このように、男女共同参画施策には障害者の視点が、障害者施策にはジェンダー視点がないことで、障害のある女性は施策の谷間に落ちてしまうのです。
そもそも障害者は「性」のある存在と考えられていないことが、より被害を増幅させます。療養施設や家庭内で行われる異性介助は、深刻な性被害の温床ともなっていますが、もし被害を口にしたら、その場にいられなくなるという恐怖、自立のためのお金も情報もない中で逃げ出すことも考えられず、ただ黙ってその場に留まらざるを得ない人たちがいます。それは今現在も、この同じ日本の中の、閉鎖された空間の中で起こっているのです。
そしてこのコロナ禍により外出できない状況が、こういった被害をより増大させ、深刻化させることを懸念しています。

障害女性の声を届けるために

女性ネットは、『新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書』を、今年4月30日、内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、内閣府男女共同参画局長宛に、以下6項目の提言をしました。

  • ジェンダーに基づく暴力への対応と、防止に関連する施策、救済へのあらゆる段階において、障害のある人への対応を組み込むこと
  • 支援サービスの安定的維持と、ケアワーカーの感染予防対策や処遇改善
  • 命に優先順位をつけられることなく、医療を受けられること
  • 性と生殖に関する健康・権利に基づくサービスへのアクセスの確保
  • 情報アクセシビリティの確保
  • 政策討議への当事者参画

この要望書の中で、優生保護法(1968~1996)の存在が、今も障害者に影響していることを指摘しました。女性ネットが1986年発足当時、その撤廃を目的の1つに掲げていた優生保護法は、「不良な子孫の出生防止」と明文化して、優生思想を社会に根付かせ、障害者を劣った存在、生きるに値しない存在とし、現在の出生前診断拡大にも繋がっていると考えます。特に、複合的・交差的な困難に直面する女性や少女、性的マイノリティの人々など脆弱な立場にある人の価値を低くし、より力を奪ってきました。
日常的に、「みんなが大変なのだから、自分さえ我慢すればいい」と思わされてきたのです。
また、産む/産まないを決定する自己決定権、正しい性教育や情報を得て、保健医療にアクセスする権利を否定され、それらは未だ回復されていません。
しかし、被災した障害女性が、避難をきっかけに自立できたという事例もあるように、災害が困難な状況を打破する機会に変えることにもなり得るのです。
災害は日常的な困難を浮き彫りにします。今この非常事態だからこそ、奪われてきた権利を取り戻し、複合差別撤廃を最優先課題として中心に据えて取り組むことが求められます。

  • ゆめ風ホームページのトップに掲載(「避難所などでの障害がある人への基礎的な対応」)
セミロングの女性

藤原( ふじわら )久美子( くみこ )

自立生活センター神戸Beすけっと・事務局長/DPI女性障害者ネットワーク・代表。十代でⅠ型糖尿病を発症、合併症により35歳で視覚障害者(弱視)となる。40歳で妊娠したが、障害を理由に中絶を勧められた経験から、障害女性の複合差別解消に向け取り組んでいる。
2019年12月、米国の財団より、日本の女性リーダーに贈られるチャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞を受賞。

©ゆめ風基金