特定非営利活動法人 ゆめ風基金

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ゆめごよみ風だよりNo.91 | 2020/5/16発行

共生しなければ命は守れない

理事 宇田川 うだがわ 規夫 のりお

「女川いのちの石碑」と縦書きされた石碑
女川いのちの石碑

今年の総会は新型コロナウイルスの影響を避けるため、委任状により成立させる異例の形でした。障害者本人が罹患すればより大変なだけでなく、介助者が陽性になっても当事者の生活は立ち行かなくなることを考えれば妥当な対応だったと思います。介助者が不足している中、毎日が綱渡りとの声を聞くと当事者の困難を考えざるをえません。
このコロナウイルス禍の中で、中国人やアジア人への差別が世界各地で起きているそうです。不安はより人に猜疑心からの差別を生み出しますが、障害者への差別もこの猜疑心があるのではないでしょうか。私は東京で知的障害者のグループホームを作る時に、地域の人と話し合いをしました。反対の運動などは起きず無事運営を続けていますが、話し合いの中で「障害者は犯罪を起こしやすいから困る」との意見が出されました。よくある誤解ですが、その誤解を生む元は単純です。お互いを知らないからであり、この社会はお互いを知り合う機会を作っていないからです。そんな風潮に大きく関係する裁判が私の住む横浜であり、3月に判決が続けて出されました。
一件は津久井やまゆり園事件です。誰しもが疑問に思い、知りたがっていた、なぜ彼はこのような考えを持つにいたったのかという点は深く解明されずに死刑判決が出されました。しかし障害者は迷惑な存在だと考える経験を彼はやまゆり園での勤務中に持ち、社会から排除すべきと思うようになったと津久井やまゆり園事件検証報告書は指摘しています。外から鍵をかける個室、寝具しかない部屋などの施設のあり方は問題があります。しかし残念ながらこのような問題や、共に生きるという事について深く考える大切な機会を失ってしまったのがこの裁判の進め方と判決でした。しかしこの臭い物にふた式の裁判の進め方は、検察も弁護側も同罪といえます。また、あえて深読みすれば、問題の根底には触れないでおこうという意思が司法にあったのではないかとさえ憶測してしまう、そう感じさせる判決が同じ横浜地裁でその2日後に出されました。
先天性ミオパチーを持つ光管和希くんは、人工呼吸器をつけながらの普通学級への入学希望を川崎市教育委員会が拒否した件で裁判を起こしました。
判決では「障害の有無にかかわらず一緒に学ぶインクルーシブ教育は、特別支援学校での教育を排除するものでは無い。人工呼吸器をつける和希くんの教育的ニーズに合致し、安全な学習の場を提供できる」と言っています。
インクルーシブ教育ってそういうものだったかなぁと誰しも疑問に思うはずですが、判決は文科省の言い分を踏襲しているわけです。お互い知り合えないまま、知り合えないままでいなさいと言っているのです。
こうやって社会から排除された障害者は、災害時により危険にさらされます。東日本大震災では障害者の死亡率は全体の死亡率の2倍とはよく語られていますが、NHKのデータからは女川町の全死亡率7.01%に比して、聴覚障害者の死亡率は22.5%、肢体不自由者は18.45%、南三陸町では全死亡率3.82%であるのに視覚障害者では14.29%などといった驚くべき数字を見ることができます。しかもこういう調査を厚労省はしていません。その結果か、陸前高田市、気仙沼市、仙台市は回答していません。
共生を進め、地域でお互い支えあいながら暮らすことを当たり前にしないと命すら守れないことを、これらの数字ややまゆり園事件は伝えていますし、その道のりの険しさを川崎市の入学裁判は告げていると感じさせられます。延期となったオリンピック・パラリンピックは共生を高く掲げているにもかかわらず。
「迷惑」をかけ合う事が気軽にできる社会は、誰でも生きやすいと言われます。それを実体化するためにどんどん世間と付き合うことをしなやかに進めなければと思います。 (3月26日 記)

執筆者プロフィール

2018年度からゆめ風基金理事。国際救急法研究所を主宰し救急法を指導する傍ら、知的障害者のたまり場「らんがく舎」を運営している。

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