特定非営利活動法人 ゆめ風基金

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ゆめごよみ風だよりNo.89 | 2019/12/5発行

想像する力

理事 岩永 清滋

当事者という言葉がある。障害者問題を当事者である障害者を抜きにして語ってほしくない。被災障害者の現場を知らずして支援はできない。だからゆめ風基金では災害があるとゆめ風ネットなどの協力を得てまず現地を調査することにしている。しかし限られた時間の調査だから、当事者のすべての現状を把握したなどという自信はない。まして支援と言っても、ゆめ風基金は資金を提供することに専念している団体だから、被災障害者の苦しみの一部しか軽減できない。「せめてお金だけでも……」というのが本当のところであり、限界を感じながら活動している。
当事者でないとわからないことはあまりにも多い。しかしながら、当事者しかわからないのかというとそうではない気がしている。
私は下肢障害で車いすを使っている。けれど時々もし目が見えなかったらどうだろうと考える。耳が聞こえなかったらどうだろうということもだ。以前大腸の手術をしたとき、ひょっとしたら人口肛門をつけることになるかもしれないと言われた。結局はそこまでいかなかったのだが、その時はオストメイト対応トイレなどのことをいろいろ勉強した。
災害も同じである。洪水のニュースの時、ゴムボートで助けられているシーンを見ると、もし自分だったらどうやってボートに乗ろうと考える。がけ崩れで二階の若夫婦は助かったが一階の親は死んでしまったということがあった。若夫婦は親が歳をとって階段があがれなかったので一階で寝ていて助けに行けなかったと涙ながらに語っていたが、おそらく自分なら一階で寝ていてだめだったろうなと思う。停電が長引いて大変だというニュースがあったが、自分だったらどうやって暮らしただろうと考えると恐ろしくなった。水の配給シーンも多いが、あんな重たいものを運べそうもない。自然災害ではないが列車事故で傾いた列車から線路に飛び降りている画面があったが、自分だったらできそうにない。誰か助けてくれたとしても無事に降りられそうにない。まして線路に降りても、あんな砂利道をどうやって歩くのだ。
想像するときりがない。しかしここまで書いてきて気が付いた。障害者が障害者のことを想像できるのであれば健常者だってできるのではないか。災害が起こっていない地域から災害が起こっている地域のことを想像することはできるのではないか。想像はあくまで想像だから事実とは異なるかもしれない。けれども事実の一端を垣間見ることはできるだろう。ほんの一端であっても感じることができるのであれば、かなりの部分で当事者と共感を持てるだろう。
想像する力は、おそらく人間だけが持っている力である。想像するということは、相手の立場になるということでもあるし、共感するということでもあるし、苦しんでいる人に寄り添うことでもある。
しかしこの人間だけが持っている力を捨てさっている人が多いのはなぜなのだ。車いす用トイレや車いす用駐車場に、何食わぬ顔をして元気そうな人が入っているのはなぜなのだ。プラットホームのホーム柵の設置を求めたとき、そのようなものをつけると酔っ払いがそれに乗ってあぶないといった電鉄会社の人がいた。視力障害者がどれだけ危険を感じてホームを歩いているのかは想像すればわかるだろう。
具体的にその場で自分に見える物事だけで判断するというのは情けないことだ。人間として想像することをやめてしまってどうするのかと問いたい。
爆弾を落とされたらどうなるだろうと想像できれば、誰も爆弾を落とそうとはしないだろう。仮に間違っていてもいい。少しでも想像する力を発揮すれば今の世の中はもう少し住みやすくなると思う。

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