特定非営利活動法人 ゆめ風基金

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ゆめごよみ風だより No.86

天災民主主義

小林 敏昭

日本列島を自然災害が相次いで襲った1年でした。この原稿を書いている時点で2018年は後1か月を残していますが、震度5以上の地震だけでも、西表島付近(3月)、島根西部(4月)、北海道根室沖(同)、長野北部(5月)、群馬南部(6月)、大阪北部(同)、千葉県東方沖(7月)、北海道胆振東部(9、10月)と続きました。地震以外にも豪雨や台風、火山噴火で多くの人的、物的な被害が出ました。半世紀近く前に出た小松左京の『日本沈没』を彷彿とさせる、まさに災害列島です。
ためしに検索サイトで「環太平洋火山帯」と打ち込んで「画像」を選ぶと、太平洋を中心にした世界地図がたくさんヒットします。過去の大地震の震源を一つひとつ赤い丸で示した地図を見ると、日本列島全体が真っ赤に染まって思わず目をそむけたくなるほどです。その赤い列島に今も40基を超える原子力発電所が存在しています。ちなみに世界に原発を売り込む米国には100基ほどの原発がありますが、その多くが環太平洋火山帯から遠く離れたミシシッピ川以東の州に設置されています。
話が少し横道にそれました。今は原発の話をしたいのではありません。天災はいつもその後に人災を引き連れてやってきます。ゆめ風基金をはじめ多くの公私の団体や個人がこれまで積み上げてきた防災や被災支援のノウハウはとても大切ですが、人災の拡大を防ぐにはそれだけでは不十分です。そのことに気づかせてくれるアマルティア・センという経済学者の言葉を紹介したいのです。
インドで生まれ欧米で活躍し1998年度のノーベル経済学賞を受賞した彼は、その翌年にニューデリーで行った「普遍的価値としての民主主義」という講演(『貧困の克服』集英社所収)で次のように語っています。
「別のところ(引用者注:『貧困と飢饉』82年)で、私は、世界の悲惨な飢餓の歴史の上で、比較的自由なメディアが存在した独立民主主義国家にあって、本格的な飢饉が発生した国は一つもないという注目すべき事実を論じたことがあります。/数年前にエチオピア、ソマリアその他の独裁国家で発生した飢饉、もっと以前には、一九三〇年代ソ連のスターリン政権下の飢饉、一九五八年から六一年にかけて大躍進政策失敗後に起きた中国の飢饉、さらに遡って、植民地支配下のアイルランドやインドにおける飢饉などいずれをとってみても、例外なくこの法則があてはまります。」
過去の飢饉は洪水や干ばつなどの天災によってではなく、民主主義的な選挙制度や言論の自由が存在しなかったために政府の政策が批判にさらされなかったことによって起こった。それが被害を拡大させた。彼は過去の飢饉の一つひとつを丁寧に分析して、そう結論づけました。このことは飢饉に限らず、さまざまな天災が起こった後の対応の問題全般に及ぶものです。これからも災害列島で暮らさざるを得ない私たちにとって、これはとても重要な指摘だと思います。思想・信条の自由や人間らしく生きる権利、民主主義的な政治制度などは、先の世界大戦を経験していない私たちには普遍的なものに映るかも知れません。でもそれはたかだかこの数十年の間に築かれた未完成で不安定なものです。それをもっとしっかりしたものにしていく必要がある。今の政治の流れを見ていて、私はその思いを強くしています。

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