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ゆめごよみ風だより

No.792017年5月21日発行

リレー・エッセイ 災害と障害者 第54回

熊本地震
避難所となった学校で…

震災後…

4月14日の1度目の地震の直後から、私の勤めている益城町の小学校は避難所となりました。翌日朝一番に出勤し、避難所対応。疲れ切って帰宅したその夜に2度目の地震。立て続けに襲ってくる余震の合間を見て家の外に逃げ、何も倒れてこない、何も落ちてこないような空き地を探し、ブルーシートを広げて家族と一夜を過ごしました。

家族を親戚の家に避難させた後、18日に出勤した時、ある30代くらいの女性とその母親らしき親子連れの姿が目に付きました。「おおごつですね。」(熊本弁で、大変なことになりましたねという意味)と声を掛けたのですが、親戚の家に帰ってたまたま目にしたテレビ番組の中にそのお母さんの姿を見つけ、はっとさせられました。「うちの娘には『障害』があるので手が離せない。トイレにも行けない。水や炊き出しをもらうために並ぶこともできない…」少し落ち着いて考えれば容易に分かることなのに、自分はただ「おおごつですね」と声を掛けただけでした。日頃「共生だ」「合理的配慮だ」などと言いながら、自分は何をしているのか、自己嫌悪に陥りながら、自分にできることを必死で考えました。

自分にできること

翌日出勤し、体育館の片隅におられたそのお母さんと話をし、やるべきことを整理して考えました。

まず第一に、どんな方が、どのくらい避難しておられるのかを把握するために「『障害』等をお持ちの方、医療的なケアが必要な方へ」という文書を作成し、校内を見回って、手渡しで文書を配りました。その文書には、性別や年齢、ご家族の方のお名前、連絡先、校内のどこに避難しておられるか、必要なケア・介助等を書いていただくことにしました。また、落ち着ける環境、これまでの生活状況(施設利用等)等についても書いてもらいました。

次に、支援の必要な方や家族の方が自分で訴えなくても、周りが一目で気付けるようにクローバーマークのペンダントを作り、同時に「このクローバーマークをお持ちの方はお手伝いを必要とされる場合があります。ご協力をよろしくお願いいたします。」という張り紙を避難所のいたる所に掲示しました。

浮き彫りになった課題

それらの取り組みをしながら、日がたつにつれ、仮設トイレのこと、入浴のこと、更衣室のこと、授乳室のこと…。「障害」者と呼ばれる方だけでなく、お年寄りの方や女性の方、小さい子どものことなど、いろんな課題が見えてきました。

福祉避難所にも連絡をしましたが、被災していて機能していなかったり、日頃利用されている方と一般の避難者の方で手一杯で、新たに人を受け入れる余裕がないという答えでした。今回の震災が起こるまで、私は「福祉避難所」についてほとんど知りませんでしたが、今思うのは、「障害」者と呼ばれる人たちを「福祉避難所」に、という発想そのものが違っているのではないかということ。ひとたび、今回のようなことが起これば、誰もが、一番近くの安心して過ごせる場所を求めます。そこが「福祉避難所」だと知っても、他に安心して過ごせる場所を見つけられない人は、そこに避難してくるし、「障害」当事者の方やそのご家族も、今回のような時には、「自分は『障害』者だから福祉避難所に行かなければ…」と考えられた人は少なく、そんな余裕もなく、まずは一番近くの避難所に行かれる…。

日頃、「共生」ということを何より大事に考えてきたつもりでしたが、「共生の避難所」という視点は持っていなかったなぁ、と反省させられます。手厚いケアを受けられる「福祉避難所」を作るよりも、どんな人でも安心して過ごすことのできる「インクルーシブな地域の避難所」をまずは作るべきだと今、強く思っています。その実現のためには「インクルーシブな学校」を作ることが不可欠。現実はなかなか厳しいものがありますが、自分ができることをこつこつやっていくしかないと思っています。

川口(かわぐち)久雄(ひさお)
1968年生まれ。熊本県上益城郡内で20年間「障害」児学級担任として過ごす。現在、益城町立広安西小学校「障害」児学級担任。熊本県人権教育研究協議会 研究部「共生の教育」研究員。

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