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ゆめごよみ風だより

No.632013年12月17日発行

リレー・エッセイ 番外編

逆転の発想、ひとつ、ふたつ……

福島から京都に来た鈴木絹江さんとゆめ風の牧口一二による障害者対談

10月28日 ゆめ風事務所の前で

牧口ことし九月二八日、福島から鈴木絹江さんが大阪の今宮(天王寺の近く)に来られるってことで、『逃げ遅れる人々』は三回観てるんですが、ぜひ講演を聞きたいな……と。

鈴木そうでしたか。上映会と、障害を持つ人の防災と避難に関する講演会でした。

牧口そこで面白いな、と思ったのは地域の避難所の問題と要援護者の登録で、どちらも「逆転の発想」として語られ……まず、避難所では、自分の家を避難所にしようという。

鈴木そうですね。障害を持つ人も持たない人も、災害が起きたらまず避難所に……が前提だけど、まぁ避難所はバリアフリーじぁないし、障害者には使いにくく、かえって体調を崩す人も出るわけで、避難所には行かないって人たちも多くて、前もって障害者の家を避難所として登録しておけば……と考えたんです。もし災害を免れた場合にはそこに物資と人材が回ってくるので、それを地域ぐるみで活用するという。

牧口なるほどね、避難所のルートから外れてしまうと、なかなか物資が来ないもんね。

鈴木そうそう、物も人も来ない。だから「自分の家を避難所にします」と登録しておくと、そこに物資も入るし、障害者の家に行けば物資がもらえるってことで隣近所の人が集まってきて、人のつながりが地域の中にできてくる。つまり、逆転の発想。でも、原発事故のひどい放射線の地域ではいかがかな?。

いまの避難所は弱い立場の発想じゃない

牧口原発はもうごめん、として。つまり自然災害の地震とか津波での話として考えて……

鈴木あと洪水とか崖くずれ。

牧口そう、そこでは有効な話になるけど、「う〜ん?」と思ったのは、障害者の家を避難所にするにしては家が小さすぎるというか、隣近所の人たちが避難してきたら入れないでしょ。

鈴木私が言ってるのは、障害者の家を避難所に指定するというだけで、決してみんなが駆け込んでくるというものじゃなく、物資供給所というイメージです。

牧口救援物資ステーション?

鈴木そうそう、キーステーション。とにかく障害者の家に水と食料が届けられ、近所の人たちは必要なものが手に入るという感じになったらいいな、というもの。そこに避難してきて寝泊りまでは考えていません。

牧口でも、避難所って、寝泊り、住み込む……そういうもんでしょ。だからね、ボクが思うに、個人の家ではムリだけど、障害者の自立生活支援センターなど障害者が主体の拠点が、あちこちに出来てきたでしょ。それならいけるかな?と。

鈴木名古屋では「避難所」じゃなく、ステーションみたいな「救援センター」という役割にすべきだと言ってますよね。たとえば、福島の場合は「ビッグパレット」にみんな集まったんです。で、三千人収容されたんですが、その中に百人くらいの障害者がいたとして、とても障害者のニーズを拾うなんてできない。三千人のほうに人も能力も取られてしまう。だから、避難所には行けない。行っても私たちの声は聞いてもらえない。「うるさい」とか「奇声あげんな」と言われ、「あんたたちだけが大変じゃないんだよ」ってね。

人として、寝る・食べる・暖かくは当然の権利

震災当日の指定避難所

牧口障害者が後回しになる、邪魔者扱いされる……一般社会の構図そのままなんよね。

鈴木そうですよ。避難所へ真っ先に駆け込めるのは元気な車を持ってる人たちで、そういう人たちが体育館の端っこをぐるりと占領して、残るのは真中か入り口あたりか。結局、障害者と高齢者が居心地の悪い場所になってしまうんですよね。

牧口そういう時に怖いのは、「だから福祉避難所を作れ」という話が出て、すんなり一般社会で受け入れられて。それは昔、障害者が施設に放り込まれていたのと同じですよね。せっかく地域で生きようって、みんなが運動して、やっとここまで来てんのに、大災害が起こると元に戻っちゃう。これこそ大災害や。

鈴木福島県も今、そういう状態になってますよね。結局、福祉避難所の一つとして、地域のちょっとした福祉避難所というのもありますが、たいてい施設に放り込まれて、入ってみたら、家族は手が離れたので万々歳だし、本人も「えっ、こんな三食昼寝つきのところに居ていいの」と、出たくないと言う。もしくは「出たい」と言っても出してもらえない。そういう状態で、「やっぱり施設は必要だ」という逆の流れになっちゃってる。

牧口それをすんなり受け入れちゃうでしょ。それがキツイ。地域のためにもそこで暮らす障害者の家を拠点に……という発想になんとか切り替えたいなぁ。

なかなか安心できない世の中が…そこにある

鈴木そこで、要援護者名簿の作成リストに載るということは、同時に「私の家を避難所にしていいよ」もしくは「物資供給センターにしていいよ」と名乗るチャンスでもあるわけで……。

牧口うまく繋ぐなぁ。二つ目の「逆転の発想」ってわけやね。

鈴木そう、障害者の家に物資と人材がくれば、どんどん活かして、介護者の派遣とか相談にも乗れるよ、っていうキーステーション。障害者が地域の役割に手を上げておくのはとてもいいことかな、って思うんです。

牧口それはいい。障害者の社会的な位置が確立してくるよね。要援護者名簿のことも悩ましいけど、結局、障害者もいざとなったら「命あってのものだね」みたいな感覚があるから、「個人情報保護なんて、それどころやない」という乱暴な意見に流されてしまうわけでしょ。それに抵抗するには……いろいろ考えると、どう考えても自然災害が起こるのは、このところ頻繁に起こってるけど、それでも日常の日数からいうと稀なわけで。で、やっぱり日常のほうが大切なんですよね。普段の個人情報保護というのは当然ながら大事なわけで、とくに最近は詐欺とか頻繁に起こってるでしょ。高齢者がどれだけ電話で騙されてるか、グルになって騙すんやから、とてもイヤーな、そういう日常やからね。

私たちは既存のホテルに助けられました

牧口結局、非常事態より日常のほうが大事やと。まず役所が全住民の状況を把握してるはずで、生命を守る義務はきちんとやってもらって。要援護者リストは整備しておいて、障害者のほうから「いまは友達関係があるから」とか「親もまだまだ若いから」と、それぞれの事情で、「いまは助けてもらわなくても大丈夫です」という状況を役所に届けるんですね。

鈴木状況に応じた逆提案です。でも、これは私が考えたというより、他の地域でやっていたとこ、神戸とか。そういう逆転の発想で、役所ではすべて網羅してて、たとえば六五歳以上の一人暮らしとか、高齢者同士の夫婦とか、障害者はもちろん、それから手帳を持ってない人とか、精神障害がある人とか、すべて網羅しているそうですよ。

牧口どこまで正確に記録してるか、わからへんでしょ。

鈴木でもね、今回、南相馬で民間の力を借りなければ掘り起しができなかったんですけど、そこの中でも精神障害の場合は民間に任せないで、「それは役所がやります」と言ってたみたいです。一度でも精神病院にかかった人はデータとして残っているみたいです。やっぱり、知られたらいやだという人たちも沢山いるので、そこは役所がやる。そういう線引きがお互いわかっていればできないことではない。一番は、「私を助けに来てください」と手を挙げるってことが大変なわけですよね。それを役所に電話するとか、実際に足を運ぶとか、手紙とか……それより、こちらから「来なくていいです」というのは言いやすいでしょ。それと既存のホテル・旅館……ただ、ライフラインが可能なところだけど、そこを広域な福祉避難所として協定を結んでおくと、建物と人材を活用させてもらえて、環境に敏感な者はとても助かる。避難所よりずうっといい。私たちは自分の障害を考えて危機をしのいできました。

人まかせにせず、こう生きたいを表現したい

震災から1ヶ月の陸前高田市メインストリート

牧口役所は障害者を助けるのは当たり前、高齢者を助けるのは当たり前の施策が必要だ、と。それは役所側の当然の仕事としてしっかりやってもらって、障害者や高齢者の中に、現状では介護が必要でない人もいるわけで、「今のところ私は大丈夫ですよ」と手を挙げるわけですね。で、手を挙げてない人は当然のこととして役所が助けに行くってことやね。

鈴木そう、「私のところは、いま家族がいるので」とか、「自分だけで逃げられる状態だからとか、助けに来なくていい人が手を挙げておいて、役所はそれ以外は助けに行く。

牧口役所というのは、障害者のほうから言うてきたら、それを信じてくれたらいいんやけど、役所はそこでどうするかやね。

鈴木そうね。

牧口きょうは二つの「逆転の発想」を伺ったんですが、言い換えると、障害者自身が能動的に、というメッセージだったんですね。京都からわざわざ「ゆめ風」の事務所まで来ていただき、ありがとうございました。

すずき きぬえ
ケア・ステーションゆうとぴあ(福島県田村市)理事長。障害者自立生活支援センター福祉のまちづくりの会所属。全国自立生活センター協議会認定ピア・カウンセラー

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