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ゆめごよみ風だより

No.592012年12月21日発行

リレー・エッセイ 災害と障害者 第四〇回

震災があったから

「震災後の疲れが今頃になって出てきたみたい」という言葉が、最近、周囲からよく聞こえてきます。被災地で暮らす人たちは、震災から1年半が過ぎた今も、心身の疲労を抱えています。みんな、それぞれの疲れや痛みをなんとか騙し騙し生きている、そんなふうに感じています。

被災地障がい者センター石巻(以下、センター石巻)は、2011年10月1日に開所しました。私がセンター石巻のスタッフとなったのは、事務所開所後のことです。それまでは、障がい者支援とは無縁の生活を送っていました。だいぶ前に仙台市のCILたすけっとに関わったことのある縁で、確か震災の翌月に、たすけっとの杉山さんから支援が必要な障がい者が周囲にいないかどうかの問い合わせの電話がありました。そんなことがあってからも、被災した障がい者について深く考えることもなく、床上浸水20センチの自宅の片づけなどに追われる毎日でした。

そして、10月。石巻に障がい者支援の拠点を設けるので、事務・電話番をやってくれないかと、再び杉山さんから連絡がありました。その頃はようやく精神的にもゆとりが出てきた時期で、仕事を探していたこともあり、「まあ、やってみるか」というような気楽な感じで引き受け、今に至っています。

センター石巻のスタッフとなってから、センター石巻の立ち上げのメンバーである阿部俊介くんと石森祐介くんという地元の障がい当事者と出会いました。さらに、地元の障がい児・者とそのご家族の方々とも知り合い、それまで知らなかった、関心を持っていなかった石巻地域の障がい者の状況について、いろいろと知り、学ぶこととなりました。

センター石巻に関わっている障がい児・者、家族の皆さんから、震災発生時、そして震災後の避難生活についてのそれぞれの体験談を聞きました。

避難所となっていた学校の体育館で、毛布をかぶってジッと静かにしていた子。給水車から家まで水の入った重い容器を運んだ子。どちらも知的障がいと発達障がいのあるお子さんですが、震災後の環境の変化を伴う非常時にも、それぞれ適応しようとしていたそうです。

避難生活の話の中で特に印象的だったのは、近隣の人達との日頃からのつながりによって、避難所での生活を乗り切ることができたというケースです。

医療的ケアが必要な重症心身障がいのあるお子さんは、震災後、小学校で避難生活を送りました。避難所での生活は、障がいがある人にとっては殊更に不便で不安なものだと思います。しかし、小学校、中学校と地域の学校に通い、地域住民とのつながりが強かったそのお子さんとご家族は、一緒に避難していた近所の方々の協力によって、その困難を乗り切ることができたとのことでした。

また、知的障がいと発達障がいのあるお子さんは、母校でもある中学校で避難生活を送りました。人が大勢いる環境はそのお子さんにとっては大きなストレスになります。一緒に避難していた近所の方々は、以前からそのお子さんの障がいについて理解があり、家族だけで過ごせる空間を確保できるよう工夫してくださったそうです。中学校の先生も協力してくださったとのこと。そのおかげで、避難所での生活に耐えることができたと、お母さんはおっしゃっていました。

これらのケースから、日頃から隣近所、地域の人達と知り合い、つながっていることが、いかに大切かがわかりました。このことは、障がい児・者だけでなく、高齢者にも、いや、誰にでも言えることだと思います。互いに声を掛け合える人達が近くにいると思うだけでも心強いということを、私自身も、この震災時に改めて実感しました。

実際、震災後に頼りになったのは、行政ではなく、ご近所・地域のネットワークであったという声を様々なところから聞きました。自分達ができることとして、そうした関係を作っておくことが、非常時への備えの一つとなるのではないでしょうか。

震災前と震災後では、私の生活もずいぶんと変わりました。センター石巻のスタッフとなってから、本当にたくさんの方々と出会いました。障がい児・者の皆さん、ご家族の皆さん、全国からのボランティアの方々…。震災がなければ、絶対に出会わなかったであろう方々との出会いと交流は、私にとって大切な宝物です。ありがとうございます。

震災があったから失ったものや生まれた悲しみもありますが、震災があったから得られたものもあります。センター石巻のメンバーも、それぞれ震災をきっかけに新しい道を歩き始めました。

石巻の復興への道のりはまだ遠く、センター石巻の活動もいまだに足取りがおぼつかないのが現実ですが、なんとか少しずつ進んでいきたいと思っています。

最後に、全国からのご支援に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

箕田(みた)朗子(あきこ)
1966年12月19日、宮城県石巻市生まれ。左下肢機能障害あり。身体障害者手帳5級。自称「中途半端障害者」。被災地障がい者センター石巻で、主に事務を担当。

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