ゆめ風基金

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ゆめごよみ風だより

No.532011年5月29日発行

個人支援を軸に、
新たな福祉のまちづくりを目指して岩手・宮城被災地障害者支援活動報告

八幡隆司

衝撃的な街の風景からの出発

最初に現地入りしたのが3月18日。この時は現地の様子を下見するとともに、ボランティアの入り込みについて打合せをしました。その後体制を立て直し、3月30日に改めて仙台に入り込み、早1ヶ月余りが経ちました。

最初に宮城県内の障害者団体が集まり、被災地障がい者センターみやぎ(以下「みやぎ」)が設立されました。翌日には被害の大きかった石巻に入り込み、自らも被災しながら避難者支援にあたっている社会福祉法人祥心会の村上さんに話を聞きに行きました。

そこへの道中、車がひっくり返り、船が海から陸へ押し流された風景が並ぶのを見ながら、津波被害の広大さと凄まじさを肌で感じました。その施設には利用者だけでなく、町民の方も40人ほど避難されていて、その中には6人ほどの車椅子利用の方もいました。「家を失い、車も失って通院もできなくなった。車イスも流された。でも命が助かっただけでも良かった。」と話す避難者の方に、自分たちがどれだけこたえることができるのかと感じました。またどれだけの事が出来るか分からないけれど全力を尽くす、ずっと支援を続けると自分に誓う瞬間でした。

辺り一面が瓦礫となった町。遠くにぽつんとマンションが残っている
以前が想像つかないほど壊滅的な状態の陸前高田市

もちろん自分一人で大きなことが出来るはずもありません。ゆめ風基金を支えて下さった多くの人たちの力を、この東北にむけること、それが私の役割です。

ただこれまで現地で精力的に活動をしているつもりではあるものの、現地の情報をなかなか支援をして下さる方々にお伝えできていなかったことをお詫びするとともに、あらためて宮城、岩手の活動を報告させて頂きます。

宮城の支援活動繰り返される無駄な労力、支援を届けるまでの道のりの長さ

大きな災害が発生するとゆめ風基金では、まず現地の障害者拠点や避難所などを訪ねます。しかし阪神大震災でも、新潟の2回の地震でも避難所に障害者がほとんどおらず、今回の様な甚大な被害の中でもやはりそれは同じです。

福祉施設に身を寄せる障害者には出会うものの、小学校など行政の指定避難所には、障害者がほとんどいませんでした。阪神大震災の時も多くの障害者が全壊・半壊という危険な建物であっても、家の形があればそこに留まっている人が多くいました。津波の災難を逃れた人でも、ライフラインが完全に止まっている中では、多くの人が避難所に身を寄せ、食料をはじめ必要物資の配給を受けているのに、障害がある人たちはじっと家の中で耐えている、家では住めない人が親せきを頼って避難している、そのことは容易に想像できました。

私たちがしたいのは具体的な支援であって、調査なんかではない。なのに支援を必要とする人に出会うために、安否確認調査をする日々が続きました。

行政は勿論、福祉サービスを提供する事業所、避難所で避難している人、支援学校の先生など色々な人たちの話を聞くなかで、一人、また一人と支援を待っている障害者に出会うことができました。

当初は障害者団体を中心に不足する医療物資や福祉用具を配っていたのが、個人宅に切り替わり、物資だけでなく、入浴介助、見守り介助、通院介助など人的支援をすることが増えて来ました。

また一方では全壊をはじめ、設備を失い、日中活動ができなくなっているところへ支援金を出し、日中活動の再開に向けた援助を行いました。

阪神とは違う福祉基盤、地域格差の中で

阪神大震災が起きた16年前とは違い、今は各地に福祉サービスを提供する事業所が数多く存在します。しかし宮城県の中で活動をしていて感じるのは、そのような状況にあるのは仙台だけで、北も南もサービスを提供する事業所が非常に少なく、選択肢がないこと、またホームヘルパーサービスなど、訪問系のサービスが極端に少ないことです。

さらに同じ宮城県沿岸部であっても、福祉基盤に相当の違いがあります。

被害の大きさの違い、人口や自治体面積の違い、更に行政の取り組み姿勢や災害ボランティセンターの取組みのちがいなどもあって、安否確認の方法や支援の手法などに違いをつけなければならないことが分かってきました。また元々福祉サービスを的確に届けるためには、どんな人が関わっているかということが重要で、「人」によりサービスの質に違いが出るため、地域ごとのキーパーソンとなる情報も重要になります。そのため支援を必要する人の背景を含めた現状をきちんとつかむため、地域の情報ファイル、個人の情報ファイルの2種類のファイルを使って1~2週間で交代する県外のボランティアさんの活動をきちんとつないでいくことにしました。

宮城の南北に障害者駆け込み寺の設置

過去の災害支援の経験が活かせることも多くあります。その1つが防災ブックレットの最後にも書いている「大丈夫ですか?は、いけない」ということです。

安否確認の時に「大丈夫ですか?」と聞いても「命が大丈夫だった」ということで「大丈夫」と答えてしまう人がほとんどで、「困っていることがない」という意味ではないのです。実際に障害を持つ子どもとお母さんが親せきの家に身を寄せたものの、その生活が長期になり、親せきからも辛い言葉をうけるようになってノイローゼになり入院した事例がありました。1ヶ月も風呂に入れていない人がありました。精神障害者でありながら、体育館での避難生活が続いている人がいました。

相手が困っているということを言い易くする事、またその困っていることにこたえられるような支援をすぐに提供できるように、日中だけでなく、寝泊りもできるような「障害者の駆け込み寺」が必要だと思いました。

仙台から離れた南の山元町や、北の南三陸・石巻などは被害が大きく、素早い対応が難しいため、その近くで物件を探しました。南は亘理町に物件を見つけ、バリアフリー工事が間もなく終わります。北は登米市に物件を見つけたものの、現在大家さんの返事待ちとなっています。

今後はこの2か所の拠点をもとに、被害の大きかった地域へ重点を置いた支援を行う予定です。

岩手の支援活動無いもの尽くしの手探りの中で

宮城はゆめ風ネットの会員であるCILたすけっとの協力で、支援活動をいち早く展開することができました。そこのメンバーと県外ボランティアさんの協力で、支援活動の形が徐々に整う中で、「岩手も被害の大きなところが沢山ある。早く支援活動を始めなければ」という思いが強くありました。しかし岩手にはゆめ風基金のネットもなく、これまで関わった障害者団体もありません。何の情報もない中でまともな支援活動ができるのか不安はありましたが、考えていても何も始まらないと岩手に入り込むことを決めました。手掛かりとしたのは、たすけっとと交流のあるCILもりおかと日本ダウン症協会岩手支部の人たち。

4月5日にCILもりおかに行き、代表の川畑さん、事務局長の今川さんに会いました。ドライバーは日本ダウン症協会の小澤さん。事態が深刻な事からすぐに協力していただける返事をもらい、1週間後には事務所の開設にこぎつけました。代表になっていただいた今川さんには事務所物件探しとともに、地元の障害者団体と連絡を取ってもらい、小澤さんには学校の教員をしている関係から支援学校の先生を紹介してもらいました。先行して地元の障害者団体の調査をしていた県内団体とつながり、今では相談支援員さんをはじめ、県内の多くの関係団体と連携して動けるまでになりました。また東北三県の連携と素早い支援を行うために、仙台に「被災地障がい者センター東北本部」を置くことにしました。

個別支援と長期支援がつくる信頼

岩手において短期に関係機関との強い信頼ができたのは、被災地障がい者センターいわて(以下「いわて」)が、行政補助の難しい障害者団体への支援を行うだけでなく、ヘルパー派遣や通院の送迎など個別支援に重点を置いて活動すること、また2~3カ月で引き揚げるのではなく、長期にわたる支援をきちんと行うということを表明したからです。

出会った人たちからの信頼を得ることで、様々な情報を頂き連携した動きができました。山田町に住む視覚障害者の男性は、父親が人工肛門を付けている事と、妹さんがリウマチであることで、通院の送迎や医療資材の提供などを必要としていました(通院送迎など今も支援を継続しています)。このほか宮古の重症心身障害児家庭へのヘルパー派遣など3件は継続した支援を行っています。4月末で個別支援の件数は30件でした。視覚障害者の支援団体や支援学校の先生等の情報が主となったものです。

また陸前高田の児童デイサービスの建物が全壊し、連休明けから他の場所での再開をしたいという要請を受けて必要な備品の支援を行うこととしました。本来は運営主体が町であるため、ゆめ風基金の支援対象外となりますが、役所自身が壊滅的な被害を受け、混乱が続く陸前高田においては当面の間、役所に代わる支援が必要だと考えています。

送迎サービスの車に車いすの方を載せている
リウマチの方の通院介助の様子(岩手県山田町)

陸前高田や大槌町などは県が主導し、障害者手帳所持者への各戸訪問が行われていますが、相談支援員さんを通じ、サービス提供の一翼を担うことを陸前高田の会議で確認するなど、県の社会福祉協議会が主催する会議も含め、地元との連携は想像以上に進みました。沿岸部で気を取られていた時、一関市など内陸部でも被害が激しいということも教えて頂き、対応を始めています。

課題は山積み、障害当事者による支援の重要性

「いわて」では「みやぎ」の調査や事務整理の手法を取り入れることで、対応の遅れを挽回してきています。しかし岩手県全体として社会福祉基盤が弱く、とりわけ沿岸部ではやはりヘルパーサービスなど訪問系のサービスがほとんど存在しません。被害の小さかった盛岡市でも障害者の人たちが町で出歩く姿をほとんど見かけることがありません。

今川さんは当事者を中心に8年もの間盛岡で活動をしてきていますが、やはり「もっと障害当事者が声をあげていかないと岩手県の福祉は変わらない」と語っています。またその言葉のとおり、「いわて」の活動は今川さんを中心にボランティアが頑張っています。

障害者支援においては災害による「困った」だけではなく、災害以前からの「困った」状況に遭遇します。私たちはそれらに対して区別することなく支援を行うことを決めています。さらに被災障害者だけでなく、被災しなかった地域の元気な障害者にも出会いを求めて、当事者を中心にあらたな岩手県の福祉のまちづくりを目指したいと考えています。

4月7日の大きな地震で停電が発生し、仙台から発電機を届けた難病のご家庭も地域とのつながりがほとんどありませんでした。 大槌町では痰の吸引などを必要とする難病の方が、電気がなくては避難ができないと救急車を呼びましたが、救急車ごと津波に飲み込まれてしまったという話を聞きました。

陸前高田はすでに行政機関によって障害者家庭の全件調査を終えているものの、私たちにつながなければならない支援は1件も上がってこなかったといいます。

しかし本当にそうなのかと思ってしまうことが沢山あります。大阪だとあたり前に街を出歩く障害者と同じような人が、ここでは「重度」だからと決めつけられ、家庭に引きこもっている姿が何件もありました。

ここに必要なのは、福祉の知識を持つ健常者だけではだめだ。障害当事者こそ支援の担い手になって、岩手県の障害者たちに声をかけていくべきだということを痛感しています。

継続した支援を続けるために、ここでも沿岸部に近い拠点を設けると同時に、息の長い支援を続けていきたいと考えています。

被災地障がい者センターみやぎ

電話
080-3303-3130/3131
FAX
022-248-6016
住所
〒982-0011 仙台市太白区長町1-6-1
ブログ
http://blog.canpan.info/tasuketto/
  • 被災障がい者への物資、支援金・人員の提供
  • 被災障がい者に関する情報収集・提供・情報交換
  • 被災障がい者に関する調査・行政等への政策提言

避難所調査101ヶ所。障がい者へ物資提供した件数は団体個人を合わせ約298件。引続き物資提供活動継続中。同時に福祉サービス利用・介助者・移動手段・住居など生活復興の為の相談も広く受付けている。

*障がい者拠点支援6ヵ所6,858,700円。

被災地障がい者センターいわて

電話/FAX
019-635-6226
住所
〒020-0866 盛岡市本宮1-3-20-1F
ブログ
http://20110311iwate.blog27.fc2.com/
  • 避難所を回って障害者の方の話を聞き、支援が必要なようなら支援をする
  • 行政を回り、障害者の状況を確認する
  • 障害者団体を回り、障害者の状況や団体の状況を確認、支援する等

今までに巡った地域:宮古市、釡石市、大槌町、山田町、大船渡市、久慈市

* 拠点となっている盛岡から被災地域である沿岸部には、少なくとも2時間〜3時間ほどかかるため、沿岸部にも拠点を設立予定。

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