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No.492010年6月3日発行
リレー・エッセイ 災害と障害者 第三十回
今から五十年以上前の昔話である。私の生まれ故郷のまち、北海道の漁村が大火で焼け野原となり、私の育った実家も丸焼けになってしまった。当時、盲学校の寄宿舎で生活していた私は火災には直接遭わず避難生活はまぬがれたが、冬休みに帰省した際に自分の住み慣れた家が無くなっていたことに強い衝撃を受けた。とりわけ建て替え途中の家のすきま風の冷たさと、位置感覚がつかめず何度も石炭ストーブにぶつかって火傷をした経験を今でも鮮明に憶えている。それでも多少なりとも立て替えのゆとりのあった我が家はまだよかった方で、住民の多くは生活の再建に少なくても二年以上の歳月と厳しい生活を余儀なくされているのを聞いて、子ども心にも愕然としたものである。
それにしても、ここ数年の世界各国の大規模地震は「恐怖」の言葉では到底言い表せなぬほどのすさまじさである。インドネシア、スリランカ、チリ、中国などなど、いずれも数万、数十万の人々が被災し、いのちを奪われ、恐らく今なお苦しい生活を強いられているに違いない。こんなにも悲惨な災害が多発しているにもかかわらず、あいもかわらず先進国や独裁国の支配者、さらにはそれに従属する研究者たちは、核や宇宙開発の競争に血道をあげているありさまである。そうした人たちがもてはやされていることにはどうにも納得ができない。もちろん私も実際には様々な科学の発展の恩恵を受けさせてもらっているし、それらのすべてを否定するという「原始への回帰」を主張する論者でもない。しかし、少なくとも今、何を重視し何を優先的課題として取り組み、そして何をしてはいけないかを真剣に検証する時に来ているのではないか。鳩山総理やオバマ大統領の責任はもとより、私たち一人ひとりにも問われていることは間違いない。
とは言うもののやはり地震はこわい。「いま地震が起こったら」と想像するだけで極度の不安に陥ってしまう。視覚障害をもち、週三回の透析を受けている私は、どうやって自分のいのちを守ったらいいか、到底冷静に考えられない。「まあその時はじたばたせずに死ぬしかないか」などど、今は深刻に悩むことを回避しているが、人一倍生きることにこだわっている私である。いざとなるとやはり生きのびるために必死になることだろう。ひょっとしたら人をおしのけてでも自分だけが生きようとやっきになるかもしれない。それならば最低限の防災対策や災害時の対応策についても考える準備をしておくべきだろう。もちろん自分にできることなど限られはいるのだが…。
一番こわいのはなんと言っても地震だろう。家の中に居ても落下物や本棚などに押しつぶされる危険性が高い。だからと言って、外に逃げてもどんな障害物や溝があるか確認することができず、どこへ逃げてよいかもわからない。まさに我々障害者は「災害弱者」そのものにほかならないのである。それでは、普段の生活の中で自分でも簡単にできることは何かを考えてみた。マスコミなどでしばしば警告される「自己防衛」はあまりに建て前だけで、非現実的だ。例えば「枕元に常に避難用品を配置しておくこと」「避難経路を確保、確認しておくこと」「ご近所さんとの連携を確立しておくこと」、どれもみな間違いなく重要であり、もっともなことばかりだ。しかし、きちんとした自治会や管理組合が機能しているマンションならいざ知らず、ほとんどの単身生活者やそれに近い「少数分散型家族」の多い都市型マンションではご近所との連帯などほぼ絶望的だし、障害をもつ我々が何かの折りに避難誘導をお願いできる人など確保することは、きわめて困難である。また私にとってラジオは常時携帯している必需品だが、乾パン、飲料水、懐中電灯などいわゆる「七点セット」の確保を日常的に確認しておくことはなかなかできにくい。
とりあえず現在の私が日々気をつけていることは、(1)靴下、上着など次の朝の着替えのある場所を確認しておくこと。(2)自分の枕元に物を積み上げないこと。(3)寝床の周辺に本箱など倒れてきそうなものを配置しないこと。(4)ラジオ、携帯電話、およびそれらの電池残量を確認しておくこと。(5)パンなど簡単に食べられる次の日の一日分の食料品ぐらいは確保すること、などであろう。
できることなら痛みや苦しみからはまぬがれたいが、一人暮らしを選ぶ以上、ある程度は覚悟の上である。しかしながらいつ来るか予想のできぬのが災害でもある。「人の体験を聞いて自分の安易さをいましめる」これが私の最大にしてほぼ唯一とも言える教訓である。
みなさん 今更言うまでもありませんが、可能な限りの防災を!あまりこわがらず自然体でがんばっていきましょう。
©ゆめ風基金